tomoka 4
思っていたよりも忙しい仕事内容に、あたしはげんなりだった。
朋子もすぐに辞めるだろうな…とどこかで思っていた。
朋子は一緒に入った仲間の中で一番物覚えが悪かったから。
誰かが怒られてる、と思うと大抵朋子だった。
でも朋子は叱られた後でも、お客さんに変わらない笑顔を見せた。
強い子なんだな、って思った。
「香、今日サボリかと思ったよ?」
遅いから心配しちゃった。そう言う朋子のこと、あたしは振り向かなくてもどんな表情をしてるか分かるよ?
これってけっこう凄いことだよね。
心配もあるんだろうけど、きっと口元は笑ってる。
イタズラをした時の子供みたいな顔をして、
─やっぱり。
思わずあたしにも笑みが移る。
朋子はこうゆう子で、側にいるだけで気持ちが落ち着く。
「また嬉しそうな顔して。良いことでもあった?」
そう聞きながらあたしの頭の中に、昨日の直樹が浮かんできて。
直樹が恋愛相談するなんて、本当に珍しいことで。
酔ってたのもあるだろうけど、きっと本気なんだろうな…
「…でね、アキラくんからメールが来たの。」
「えっ?」
アキラと言う言葉に反応して朋子を見つめると、朋子は今にもとろけそうな笑顔を顔全体に浮かべていた。
「…来たって言っても、あたしからメールしてね、その返事が来ただけなんだけど。」
「そうなんだ、良かったじゃん。」
なぜだか少しホッとした。
それが直樹の気持ちのためのものだったのか、あたしのためだったのかは分からなかったけど。