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tomoka
恋愛リレー小説 - 同性愛♀

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tomoka 40

「でも、どうして直樹と付き合うことにしたの?」
「うーん…どうしてだろう。」
「なんとなく?」
「ううん。あたしね、直樹くんにも言ったんだけど…あの日断るつもりで直樹くんと会ったの。」
 ピンクのハート型のクッションを抱きながら朋子は続ける。
「でもね…」


「俺は朋子ちゃんのことだけを見てたし、これからも一緒にいたい。」
 公園の中に一つだけある街灯に照らされながら、直樹くんはあたしのことを真っ直ぐに見つめた。
「もし、明のことをまだ思ってても…俺は朋子ちゃんが好きです。」
 その言葉に、心が揺れた。
─どうして、あたしは断ろうと思っていたんだっけ。
 そんな疑問が頭を霞める。
─確か、直樹くんのことよく知らないから…だったよね。
「朋子ちゃんの隣に、一番側にいるのは俺じゃダメかな?」


「…そう直樹くんに言われたとき、あたしもこの人の側にいたいって。そう素直に思ったの。」
 そう言ってハニカム朋子。その姿はあたしの目に眩しすぎた。
「だからなのかな。」
「…そっか。本当良かったね。」
 ─と、朋子の表情が急に曇る。
「香?」
「ん、どしたの?変な顔して。」
 あたしの頬を暖かいものが伝う。
「ごめ、あれ…何でだろ。変だよね。最近涙腺緩いのかなあたし。」
 慌てて手の甲で目元を拭うと笑顔を作る。
「だいじょうぶ?」
「うん。アレかな…娘がお嫁に行く時の父親の心境なのかな。」
「…お姉ちゃんの次はお父さんなの?」
「そうそう。本当にね、朋子はちっちゃい頃から手のかかる子で…」
「えぇっ…なんか本当のこと言われてるみたいでヤダ。」
 
 そう言って幸せそうに笑う朋子の側にいれるだけで、あたしは幸せだった。


 そんな幸せに影が見え始めたのは、恋人たちが浮き立つクリスマス当日のことだった。
 直樹と過ごす初めてのクリスマスなんだから、バイトに休みをもらうよう朋子に促したあたしは、その代わりにバイトに入ることを店長に掛け合うと、店長はすんなりと朋子に休みをくれた。
 朋子は自分だけが遊びに行くことが引け目に感じたようで、何度か断ってきたけれど、あたしはそれを取り合わなかった。…だって、ねぇ。せっかくのクリスマスだし。
 直樹だっていろいろ考えてるみたいだし。来年になったらお互い社会人になるんだから、今年が自由に過ごせる最後の年になるかもしれないんだよ?と言ったら、朋子も納得したみたいだった。
 本当に気ぃつかいなんだから。渋々といった感じで頷いた朋子の顔を思い出すと、思わず笑みがこぼれて。一瞬バイト中だってことを忘れるとこだった。
「いらっしゃいませ…朋子さん?」
 隣のレジに入っている年下の男の子の声につられて入り口に目をやると、今日から2連休のはずの朋子が立っていた。

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