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tomoka
恋愛リレー小説 - 同性愛♀

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tomoka 39

 何度かそんな押し問答を続けていたら、急に笑いが込みあげてきて。朋子と顔を見合わせると、二人でクスクスと笑った。



 「またね」と言ってありさの家のドアを閉めると、外はもう真っ暗だった。
 ありさの家からあたしのアパートまでは、歩いて10分くらいかかる。
 暗いから真っ直ぐ家に帰ろうとしていたあたしの足が、ピタリと止まった。
「やっぱり、ちょっと寄り道して行こうかな…」
 たよりなく宙に浮いている月が、あたしの進む先を照らしてくれる。

 しばらく歩くと、街灯に照らされた紅い葉があたしを出迎えてくれた。
 一週間前よりも紅さが増したその装いに、しばらくの間目を奪われる。
「この前よりもキレイ…」
 あの日、直樹くんが座っていたベンチに腰を降ろして真上を見上げる。
 目を閉じても瞼の裏に、その紅さが感じられる気がした。
─朋子ちゃんのことが好きなんだ。
 記憶の中の直樹くんがそう告げてくれる。


 あたし、自分の相談ばかり聞いてもらって…直樹くんのこと何も知らないな。
 いつも笑ってくれていたけど、本当はどうだったんだろう。
 直樹くんの真剣な眼差しが目の前に浮かぶ。
「あたしも…ちゃんと考えなきゃ、だよね。」
 人を好きになったことはあっても、あんなにストレートに思いを告げられたのは初めてだった。
 明くんもあたしから言われたときこんな感じだったのかな…
 あたしの気持ちをきちんと受けとめて、答えを出してくれた明くん。あたしも直樹くんの気持ちから逃げちゃダメだよね。
 夜風があたしの頬に冷たさを知らせる。
 でも、もう少しだけ、この場所でこうしていたかった。




 朋子から、「直樹くんと付き合うことになったの…」と言われたとき、あたしは自分で思っていたよりはショックじゃなかった。
 取り乱しもしなかったし、後押しした自分の行動も後悔しなかった。
 …ただ、頭の中に真っ先に浮かんできたのは明のことだった。
 なんで明のことが浮かんだのかは分からない。でも、明がそのことを聞いてどうしているのか。そのことが気になった。

「香?」
 報告を受けた後で黙りこくっていたあたしの様子に不安になったのか、朋子に顔を覗きこまれる。
「ん?あっゴメン。…そっか、朋子もついに彼氏もちかぁ。お姉ちゃんは嬉しいよ…」
「あたしお姉ちゃんはいないはずなんだけど。」
「…バレた?」
「でもありがと、香。」
 そう言ってフワッと笑う朋子が、この間までと違って見える。
 恋をすると女はキレイになるって言うけど。やっぱり変わるものだね。
 これから朋子がどんどん変わっていくんだと思うと、少しだけ…さびしかった。

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