PiPi's World 投稿小説

tomoka
恋愛リレー小説 - 同性愛♀

の最初へ
 30
 32
の最後へ

tomoka 32

「…あった」
本当にまだあったんだ。見つけて嬉しいのか、それとも見付からないで欲しかったのか。
あたしにはどちらだか分からなかった。

一年半ぶり…かな。
おそるおそる開いてみると懐かしいあの人の文字が飛込んできて。
一字一字を確かめるようになぞってみる。
「ケン、あたし朋子と仲直りできるかな…」
明はあぁ言ってくれたけど、不安は拭いきれなかった。
ベッドに戻ってくると、仰向けになって手紙を広げてみる。

手紙って不思議だね。
この中にいる賢吾は、ずっと変わらない。

あたしが無くしたり、燃やしたり捨てたりしない限り、ここにいる。
手紙を出した人はもう忘れてしまった気持ちを伝えてくれる。

あたしも賢吾に手紙出してみれば良かったな。
今じゃ住所も知らないし。

東京でも元気にやってる?
お酒ばっかり飲んでるんでしょ。
あんまり無理しちゃダメだからね…


次に目を覚ました時にはもう8時を回っていて。
今日は朝からバイトなのに!
抱き締めていた手紙を元の場所に戻すと、慌てて準備を始める。
顔を洗ってメイクをして…
朝ごはんは時間がないから十秒チャージ。

心配顔のお母さんに、
「行ってきまーす!」
とだく伝えると玄関を飛び出す。
「気を付けてね!」
と言う声を聞きながら自転車を漕ぎだした。
朝の空気も好きなんだ。
もうすぐ秋が来ることを知らせるように、ヒンヤリとした空気が頬を切る。
全力失踪している今は、そんなのを感じる余裕もないんだけど…

「すみません遅れました!」
結局15分の遅刻。
お店はそこそこ混んでいて、こりゃ大変かも…と思っていたら、

「おはよ、あんまり遅いからサボリかと思ったよ?」

この声って、
…でもまさか。

あの子のことなら振り向かなくたって分かる。
でも今は…

「朋子…」

振り向いた先にはいつもと変わらない笑顔の朋子がいて。
バイト中じゃなかったら泣き出していたんじゃないだろうか。

「ドキドキして来たのに香遅刻するんだもん。」

本当に朋子だ…

「ほら、お客さん待たせてるよ?」
その言葉になんとかカウンターに向きを変えると注文を取る。
社員さんも今日はお説教なしにしてくれた。

あの子のことなら振り向かなくたって分かる。
でも今は…


「朋子…」


振り向いた先にはいつもと変わらない笑顔の朋子がいて。
バイト中じゃなかったら泣き出していたんじゃないだろうか。


「ドキドキして来たのに香遅刻するんだもん。」


本当に朋子だ…

「ほら、お客さん待たせてるよ?」
その言葉になんとかカウンターに向きを変えると注文を取る。
上手く笑えてるかな…


─バイトが終るのがこんなに待ちどおしかったことはなかった。


今日はもう上がっていいよ。

SNSでこの小説を紹介

同性愛♀の他のリレー小説

こちらから小説を探す