tomoka 31
ちょっとおかしかったけど、真面目な顔で続ける。
「あたしは朋子のことが一番大事。」
─直樹のことを大切って言ったのと同じくらい。…もしかしたらそれ以上かもしれないけど。
?マークが浮かんでいた明の顔が、納得したように軽く頷いた。
「本気だったら引く?」
どう答えるか聞いてみたかった。
明ならあたしの望む答えを知ってるかもしれない。なぜだかそんな気がした。
「…いいんじゃねぇの?」
─え?
「好きだったらそれでいいじゃん。」
そっか、それでいいんだ。
本当に単純だけど、素直にそう思えるようになったのは、この言葉のおかげなんだと思う。
「ありがと。」
やっぱり明ってイイヤツだね。呟くようにそう言ったつもりだったのに聞こえていたようで…少し照れくさかった。
「…で、俺はどうすればいいんだ?」
迷いのない目で見つめられる。
朋子が好きな人が、この人でよかった。
逃げないで受け止めて、きちんと話してくれる明で良かった。
きっと明なら朋子を救ってくれる。
だからあたしももう迷わないよ?
「朋子に会って欲しいの。明の話なら聞いてくれると思うから。」
そう言うと、言われる前から覚悟を決めていたのか力強く頷いてくれて。誤解を解いてくれることを約束してくれた。
その時になってやっと、あたしは今までいた暗闇に光が見えた気がした。
明が先にLUCEを出て行くのを見送ると、テーブルの上につっぷした。
やれるだけのことはやった、かな?
どうなるかは神のみぞ知るってか…
やっとのことで家まで辿り着くと、顔だけ洗ってベットに潜り込む。
ベットに入ったと同時に記憶も途切れた。
────────
香
かおり。カオリ
何回キミの名前を呼んだかな。
その度に、あの僕の大好きな顔で笑いかけてくれたね。
決して取り乱すことのないキミは、最後まで涙を流すことはなかったけど…
キミの心の場所はもうみつかりましたか?
いつでも、キミの幸せを祈っています。
それじゃ、また。
いつか。どこかで
澤田賢吾
この手紙は賢吾が就職で東京に行く前に、あたしの家のポストに入れていったもので。
あたしが手紙を開いたのは、それから一ヶ月経ってからだった。
「…勝手な男」
居場所なんてあなたの側以外どこにもないのに。
青い封筒を握り潰しそうになって慌てて手を離す。
クシャクシャになって床に落ちた封筒。
それは今の自分のようで。
あの封筒、どこにいったんだろ…。
捨ててはいないとおもうんだけど。
夜中の3時にそんなことが気になって、ベッドを抜け出すと机の周りを探してみる。
引き出し…ない。
本の間……ない。
もしかして、タンスの引き出しを開ける。
中の物には目もくれずに引き出しの底を目指す。