tomoka 27
トン、トン、トン…という規則正しい音に続いて、部屋のドアがノックされる。
「香?…入るね。」
あたしはベットの上に腰を降ろしたまま、来客を迎え入れた。
「久しぶり。」
上手く笑えてるんだろうか。
朋子に会うのは1週間以上ぶりだった。
「香…」
あたしの姿を見ると、朋子が一瞬息を呑んだのが分かった。
その頃のあたしは今よりも4〜5キロは減っていて。
顔色も悪く、化粧もしていなかったから酷い有り様だった。
自分でもどうにかしないと…と思うのだけど体がついてこなくて。
このまま消えてなくなってしまうのもいいかな、なんて考えていた。
きっとそんな思いを感じとったんじゃないかな?
あの子はあたしを悲しそうな目でじっと見つめて。
声もなく泣いていた。
「朋子、大丈夫?」
思わず心配が口を出ると、あの子はキョトンとしていて。
その次の瞬間笑いだした。
あたしは、そんな朋子が分からなくて、キョトンとしていた。
朋子はそんなあたしの顔がまた面白かったのか、口元を押さえながら笑っていて。
ようやく笑いが収まると、理由を話してくれた。
「だって、香が心配で来たのに、大丈夫?なんて聞くんだもん。」
呆れを通り越して笑っちゃったわよ。
と涙を拭いながら言う朋子に、何週間ぶりかであたしも笑うことが出来た。
─そう、あの時に朋子が来てくれたから、あたしはまた笑えるようになったんだ。
「今度はあたしの番よね?」
そう自分に言い聞かせるように呟くと、ガバッと体をベットから起こす。
朋子がダメな時は、今度はあたしがしっかりしなきゃ!
…よし!
そう決めるとやる気が出てきて。
服を着替えてメイクをしているところで、知らないアドレスからメールが来た。
内容もよく分からなかったから、ダレ?とだけ書いて返信する。
しばらくするとソイツから返信が来た。
メールを開くと、本文には、高橋明です。とだけ書かれていて。
…タカハシアキラ。
ってあの明?
早速メールを返すと、話があると言われた。
時計を見ると4時少し過ぎたところで。
それじゃ18:00にLuceで、とメールを打つ。
─直樹が明に話したんだろうか。
直樹にそのことを確かめようと思ったら、直樹からメールが来た。
どうやら直樹は明に自分が気付いていることを知られたくないようで。
もし自分が、朋子が明のことを好きだと気付いたことを明に知られたら、明は自分に遠慮してしまう気がするから…
詳しくは言わなかったけど、たぶんそういうわけなんだろう。
直樹には、了解。と返信してからメイクを続ける。
一刻も早く明に会って、朋子に会って欲しいと伝えたかった。
化粧をしても腫れた瞼と、充血して赤くなった目までは隠しきれなくて。
普段はあまりかけないサングラスで誤魔化すことにした。
ようやく準備を終えると自転車に飛び乗る。