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tomoka
恋愛リレー小説 - 同性愛♀

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tomoka 25

たまらずに視線をテーブルの上に落とす。

「香は、誰だか知ってるんだよね。」

その質問にも答えられなくて。
テーブルの上を見つめていると、氷の溶けたアイスティーが、今の自分たちとダブって見えて。
友達という固かったはずの絆が、熱に負けて溶けだしていく。
あとに残ったのは薄まった信頼と、後味の悪い後悔だけ…

「ごめん…言わなくて。」

溶けてしまった心は元には戻せないかもしれないけど、きちんと話をしたかった。

「いやいや、謝ることないよ。」

俺も香に言ってないことあったし…
と直樹がボソッと呟く。
何のことか見当もつかなくて、怪訝な顔をして直樹を見つめ返す。

「…明さ、朋子ちゃんのこと好きっぽいんだよね。」

「………へ?」

「ポイって言うか好きなんだよね。」

「えぇ?!?」

明が、朋子を…。
信じられなかった。
どう見ても朋子の片想いだって思ってたのに。

「ちょっと待って、頭の中整理するから。」

じゃあ、あの視線も朋子に向けられてた?
─チガウ。
頭の中で誰かがそれを否定する。

「…どうして直樹はそう思ったの?」

俺も気付いたのは最近だったんだけど…。
そう言って話し出した直樹の言葉をまとめると、あの雨の日に直樹もLUCEから引き帰して行く明を見たらしくて。
前々から朋子のことを好きじゃないかと思っていたため、明に直接聞いたらしい。
明の口から直接聞いたんだから、信憑性はかなり高いはずだ。
それなのに、なぜかその話をそのまま受け入れられなくて。

だって…朋子を見ていたんだったら、あんな顔しないはずじゃない?
初めて会った時だって、朋子と直樹のことあんなに…

…あれ?

なんだろ。何かを見落としている気がする。
初めて明を見た時、あたし…

「香?」

直樹の声で思考が中断された。

「あ、ごめん。ボーとしてたや。」

もう少しで何かに辿りつけそうだったけど。
今は明のことより朋子のことだ。

「朋子の悩んでる原因はあたしなんだと思う。」

そう言ってから、この間の映画館の話を直樹に話した。

「たぶんあの時、朋子見たんじゃないかな。」

全然気が付かなかったけど…。

「あたし、もう一回朋子と話せるか試してみるね。」

それでダメなら…と言って直樹を見ると、直樹も頷いてくれて。
─明に頼んでみよう。
二人とも言葉には出さなかったけど、きっと同じことを考えていたんだと思う。

その日はそこで別れて、あたしは家に帰ると朋子に電話をかけた。
祈るような気持ちで携帯を見つめる。
何度目かのコール音の後で、電話が取られる音がした。

「朋子?」

かすれた声でそう尋ねると、

─ただ今電話に出ることが出来ません。御用のかたは、電子音の後にメッセージをどうぞ。
無機質な女の人の声と、電子音が響く。

半ば予想していたことだったので、そう気落ちすることもなかったけど。

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