tomoka 24
この日も何回目かになる電話をかけてみたんだけど、出てくれる気配はなくて。
憂鬱な気分を引きずったままバイトに出ていた。
ベテランのトモコが長期の休みとなると、その穴を埋めるのも大変で。
ここ1週間、ほとんど休みがもらえてなかった。
さすがに疲れが溜ってきたのか、オーダーの取り間違いや、お釣りの渡し忘れ…といった、普段ならしないようなミスをしてしまっていた。
「大丈夫?」
社員からの注意を裏で受け終ったところで、直樹が声をかけてくれた。
そういう直樹もそうとう参っているようで、疲れが顔に出ていた。
大丈夫と頷いてから同じことを尋ねると、いつになく真剣な顔で、
「相談があるんだけど…今日終わってから時間ある?」
と聞かれた。
なんとなくトモコについてじゃないかな…と思いながら、終わったら連絡をすることを約束した。
店が閉まるまで、頭の中はこれからされる直樹の話の内容で一杯で。
やっと閉店を知らせる音楽が鳴ると、挨拶もそこそこに更衣室へと飛んで帰る。
ロッカーの戸を乱暴に閉めると、早足に更衣室を後にする。
メールするのももどかしくて、直樹に電話する。
地下鉄の駅に入っている、深夜まで開いている喫茶店で待ってるとのことで。
駆けこむようにしてお店に入ると、カウンターから離れた席でコーヒーカップを片手に手を軽くあげた直樹と目が合った。
席に向かう前に、レジでアイスティーを注文した。
会計を済ませてから、品物を持って席に着く。
「ごめん、待たせた?」
灰皿には煙草が2本消されていて。
ヘビースモーカーではない直樹が、時間を持て余していたことが容易に想像できた。
「大丈夫だよ。てかごめんね。疲れてるとこ呼び出しちゃって…」
「あたしなら平気。
…それで相談ってさ、もしかして…」
トモコのこと?と言う意味を込めて直樹を見つめると、その視線を受けとめながら、
「…トモコちゃんのことなんだけどさ、」
と切り出した。
勢いをつけるためか、グイッとコーヒーを飲んでからカップをソーサーの上に置く。
カチャン、と音を立てたカップを横目で見ながら、あたしは直樹が口を開くのを待った。
しばらくまともに顔を見ていなかったせいか、直樹も少しやつれた気がする。
「トモコちゃん、最近ずっと休んでるじゃんか。
迷惑かとは思ったんだけど、この間メールしてみたんだよね。」
「…メール、返って来たんだ。」
動揺が声に出ていたけれど、直樹はそれには気付かずに軽く頷くと先を続ける。
「トモコちゃん、好きなヤツのことで悩んでるらしくて…」
その言葉でハッと顔をあげると、悲しそうな顔で笑う直樹と目が合って。