tomoka 21
と言うアリサの口ぶりから、明がずいぶんと人気だったことを感じた。
「アリサちゃんは?」
ずいぶんストレートに聞くんだね。と笑うアリサの顔を、じっと見つめる。
「…好きだよ。友達としてね?
明イイヤツだしさ。」
「そうだね。」
直樹を心配している様子を思い出して、そう答える。
「カオリは?」
好きな人いないの?と目で聞かれ、
「気になってる人はいるよ。」
と答えておいた。
誰を想ってそう言ったのかは自分でも分からなかったけど…
─アリサに泊めてもらったお礼を言ってから外に出ると、まだ10時で。
「どうしようかな。」
腕時計で時間を確かめると、バイトまで中途半端に時間があって。
家に帰ってシャワーを浴びても11時。
また寝てもいいけど、起きれなかったら嫌だし。
と考えながら地下鉄に乗っていると、『地下鉄に乗って映画を観に行こう』と書かれた広告が目に入った。
そういえば観たい映画あったんだ。
最近気になっていた女優が十代最後の作品選んだとされるその映画は、ミステリーが好きなあたしにはピッタリだった。
吊革にぶら下がっている広告を見つめながら、今日行ってみようと決めた。
映画は12:30〜15:00だからバイトには十分間に合う計算だ。
家に着替に戻ると誰もいなくて。
それが当たり前なんだけど少し人恋しかった。
─3時間前くらいまでは、みんなと一緒だったのに。
そう考えると家に一人でいる気には尚更なれなくて。
手早く身支度を整えると、鍵をかけて家を出る。
「あっつ〜」
もうすぐ7月を迎えるからか、日差しがまぶしくて。
ようやく地下鉄の構内に逃げ込めた時には11:30を少し過ぎていて。
意外とギリギリかも…と一人呟いて足早に改札をくぐる。
地下鉄もsuicaが使えるようになればいいのになぁ。
映画館に着くと、案の定始まっていて。
暗闇のなか席までたどり着くと指定された席に腰を下ろす。
隣に座っている人がいたけど、始まってしまえばまったく関係なかった。
予想通りのストーリー展開だったけど、予想以上に主演女優の演技が光っていて。
彼女の笑った時の口元にできるエクボが、朋子のそれに重なって見えた。
最近泣いていなかったから油断していたのか。
終盤の、初めて手を繋ぐシーンで涙が溢れてしまって。
エンドロールが流れて、会場が明るくなっても止まることのない涙に、誰よりも自分がびっくりした。
止まる気配のない涙に、どうしたものかと考えていたら、目の前にハンカチが差し出された。
「良かったら、使ってください。」
優しい人もいるもんだわね。
「ありがとう、ございます?」
この声って…
改めて渡してくれた人の顔を見る。
「明くん。」
本当にこの時はビックリした。