tomoka 19
大丈夫かな?
と小声で呟いていると、足音を響かせて明がこちらに向かってくる音がした。
慌ててローソクに火をつけてクラッカーを構える。
バンッ
ドアが開けられたタイミングを見計らってクラッカーを鳴らす。
「「「「おめでと〜!」」」」
明はまったく気付いていなかったようで。
テーブルの上のケーキを見て、初めて自分の誕生日に気付いたようだった。
─意外と天然なんだよね。
直樹が言っていた言葉を思い出す。
本当にそうかも。
なんでも明は、直樹がかけた電話を勘繰りすぎて、家の中の不審者がいると思い込んでいたらしい。
想像力たくましいなぁ…
料理と一緒に買って来たアルコールを出すと、みんな目を白黒させていた。
やっぱり多すぎだったかな…
チラリと明を見ると、物言いたげな様子だったので、
「明くん、お酒強いって聞いたから。」
と微笑んでおいた。
お酒が進むにつれて人の数が減っていき、最終的にはあたしと直樹、そして明が残った。
飲みながらも力をセーブしていたあたしはまだホロ酔いで。
直樹は顔に出ないから分からないけど、ずいぶんキマっているようだった。
明はまだ余裕があるらしく、そんな直樹を心配そうに見ていた。
お酒、強いんだ。
飲みっぷりが良い人とお酒を飲むのが好きなあたしは、明と今度はサシで飲んでみたいと思っていた。
「ちょっと行ってくる…」
とおぼつかない足取りで直樹がトイレへと向かった時に、あたしは切り出した。
「あのさ、」
「ん?」
まだ目がすわっていない明がこちらを向く。
─この目じゃない
「あたし、明くんに…」
「明でいいよ?」
─そんな優しい目じゃないの。
「明に聞きたいことがあったんだけど。
訊いてもいい?」
そこまで言い切ってから明の顔を真っ直ぐ見つめる。
あたしを見つめ返す二つの目の奥に、髪の長い女が写っていた。
明が頷くのを見てから口を開く。
「あたし、明に会うの今日で5回目なんだ。」
「正確に言うと、明だって勝手に認識したのが5回、かな。」
酔った頭で数えている様子の明。
なにか負に落ちない顔をしてあたしを見つめる。
やっぱり分かっていなかったようだ。
「初めて見たのは、スーパーの前で。」
「直樹と朋子のことを、あなた真剣な表情で見てた。」
明の顔色が変わる。