tomoka 18
と笑うアリサに、朋子は複雑な顔をしていた。
─好きな人の好みが分かったのは嬉しいけど、アリサの口から聞くのは…ってとこ?
苦笑しながら振り返ると、エプロン姿の朋子に見とれている直樹がいて…
まったくドイツモコイツモ。
「直樹、部屋の準備しちゃお?」
ポーッとしている直樹の耳元に、
─少しは良いとこ見せなきゃ。
でしょ?
と首を傾けると、直樹は俄然やる気が出てきたようで。
打って変わった様子で、張り切って用意をし始めた直樹に、アリサが眉を潜める。
「何か言ったの?」
と聞かれたけど、特には何も?と肩をすくめておいた。
単純、だなぁ。
肝心の朋子は馴れない料理に苦労しているようで。
直樹の様子にまったく気付いていなかった。
「トモ、大丈夫?」
見かねたあたしが声をかけると、泣きそうな顔で頑張る…と言われた。
朋子は一人暮らしをしているけど、料理はまったくダメで。
元が器用だからきっと飲み込みは早いと思うんだけど。
でもきっと、一人で作りあげたいんだろうな、と思って口は挟まないでおいた。
アリサの監督のもと、テキパキと準備が出来上がり、あとは主役が来るまでとなった。
アキラと直樹のグループの友達の和哉と、その彼女で、朋子の友達でもある秋奈も揃って到着を待つ。
「あの感じだと、あと10分くらいかな?」
電話口でアキラを呼び出した直樹がみんなに伝えた。
雰囲気が出るように、とアリサの提案から、窓にカーテンを引いて部屋を暗くしておいた。
チャイムが鳴ったところでローソクに火をつける準備をする。
鍵は空いているから、明は中まで入ってこれるはずだった。
何回かチャイムが鳴った後でドアノブを回す音が聞こえた。
「…アリサ?」
いないのか?かすかに聞こえてくる声に、明の帰る気配を感じたのか、朋子が慌てて腰を浮かす。
が、アリサに腕を引っ張られて腰を下ろした拍子に、テーブルの上に用意しておいたケーキのフォークを落としてしまった。
フローリングの床にフォークが落ちる音が響く。
ごめん、と口だけ動かして謝ると、朋子はアリサの隣に座る。
なんだか玄関が騒がしいけど…