tomoka 17
あたしが頷いたのを確認すると、そっか…と言って黙ってしまった。
聞いてはいけないことなんだろうけど、好奇心に負けて、あたしは疑問を口に出してしまった。
「…ナナちゃんて誰?」
「あ、…やっぱり気になるよね。」
俺が中途半端に言っちゃったのが悪いんだけど…
よっぽど、言わなくていいよ?と言おうかと思った。
でも聞きたくて。
明のことがもっと知りたかったんだと思う。
あたしが黙っていることを、先を促しているのだと理解した直樹は言葉を続けた。
「ナナちゃんは、…菜々子ちゃんはアリサちゃんのお姉さんで。
お姉さんて言っても年子だから、学年も年齢も一緒らしいんだけど。」
それじゃナナちゃんも明の幼なじみなんだ?
と聞くと、直樹は曖昧な笑みを浮かべて。
「幼なじみ、もだけど…」
─付き合ってたのかな。
途切れ途切れの言葉を補うとそういうことなんだろう。
「今は?」
付き合ってないの?という意味で聞いたら、
「今は海外に留学してるみたいだよ。」
でもナナちゃんのことは明に聞かないで?
と真剣な顔をして話す直樹から、あたしは二人が別れたことを感じとった。
忘れられない人がいるなら、明のあの視線は誰に対して向けられてたんだろう。
いないはずの昔の恋人へのものだったのかな…
─でも人の気持ちなんて変わるものだし。
誰よりもあたしが知ってるはずでしょ?
「香、」
「えっ?」
降りないの?
と直樹に言われて、初めてお店に着いていたのに気付く。
「ごめん、降りるね。」
どうしてこんなに明のことを思うのか分からなくて。
今日の飲み会、チャンスがあったら聞いてみよう。
そう心に決めて、お酒を買いこむ。
他の人たちがどのくらい飲めるか分からなかったから、いつもよりも少し少な目にしておいた。
直樹の車でアリサの家に着くと、中ではアリサと朋子で料理に取り掛かっているところで。
朋子も先ほど到着したと言っていたから、ほとんどの料理はアリサが作ったようだった。
…それにしてもすごい量。
唐揚げやパスタ、シーザーサラダにミートボール、卵サンド…と、どちらかと言えば小さい子が好きそうなメニューに、首を傾げていたら、
「全部アキラが好きなやつなの。」
あんな顔してお子ちゃまだよね。