tomoka 16
好きな人と幼なじみが一つ屋根の下にいたらねぇ…。
あれ?
「そういえばアリサちゃんて誰好きなの?」
「それは、…ナイショ。」
アリサちゃんに内緒だって言われたし。
「ふぅん。」
いつの間にそんな仲良くなったんだろ…
チクッ
胸が痛い。
これが朋子に対する友達としての独占欲なのか。
それとも、それ以上の何かがあるのかは分からなくて。
あたしの気持ちは、あたしの知らない間にどこかに行ってしまって。
自分でも捕えようのない感情の渦に、あたしは巻き込まれているのを感じた。
明の誕生パーティーに誘われたのは、まだ梅雨のあけない6月の終りのことだった。
「カオリちゃんと直樹くんにはお酒の買い出しを頼みたいの。」
当日までは明に内緒ね?と言うアリサは、やけに張り切っていて。
幼なじみがいないアタシは、それが普通なのかと思っていた。
でも─
「アリサちゃんてさ、」
車を運転しながら直樹が口を開く。
「ん?」
朋子からのメールの返信を打ちながら答える。
「頑張りやさんだよね。」
「そうだねぇ。
料理も上手いし、いいお嫁さんになりそうじゃない?」
だよね〜と相槌を打っていた直樹が急に真面目な顔をして、
「アリサちゃん、明のこと好きなんじゃないかな?」
なんて言い出すから、あたしは思わずいじっていた携帯を落としそうになった。
アリサが明を?
そうだとしたら、朋子はそのことを知ってることになるけど…
「どうしてそう思ったの?」
直樹は、少し間を置いてから話し始めた。
「アリサちゃんの目がさ、」
目が?と繰り返したアタシをチラリと見てから、直樹は続ける。
「目が明のこと追ってるんだよね。」
気付いたのは偶然だったんだけどさ。
と呟く直樹を凝視してしまった。
アリサが、明を…
「まぁ、明に言わせると、アリサちゃんはナナちゃんの代わりに明のこと見張ってるだけ。
らしいんだけどさ。」
「…ナナちゃんって?」
「え?」
あたしの顔を見つめる直樹。
「直樹、赤!」
あっと言って、直樹は慌てて視線を前に戻すと、ブレーキを踏んだ。
「…ゴメン、大丈夫だった?」
赤信号のギリギリ手前で車を停めると、直樹はあたしに尋ねた。
「あたしは大丈夫。」
直樹は平気?と聞くと、なんとか。と頷いてくれて。
どんな時でもクールな直樹が、こんなに動揺したことの方がびっくりだった。
「…俺さっきナナちゃんって言ってた?」
信号が青に変わるのを待ちながら直樹が尋ねる。