tomoka 15
お店に着くとアタシと直樹が向かい合わせになって、あたしの隣にアリサ、直樹の隣に朋子が座った。
この日は朝から大気が不安定で、雨が降らないか心配になったあたしは空を見上げる。
やっぱり降りそう…
窓の外をぼんやりと眺めていると、見覚えのあるシルエットが目に入ってきて。
どこかうれしそうに歩いてくる明がいた。
みんなに来たことを教えようとしたら、明がこちらに気付いたようで、急に立ち止まった。
─あの時の目だ。
絶望したような、
やるせないような、
どこか諦めたような。
あたしはそんな明から目が離せなくて。
誰を見てるの?
あたしが尚も見つめていると、明はクルッと向きを変えて、来た道を戻って行ってしまった。
あたしは今見た光景を他の三人に話すべきか迷った。
明はこの場所に来たくないから帰ったんだろうし…
なんとなく、そのことを誰にも知られたくはないんじゃないかと思うのだ。
あたしが明だったらそうだから。
「カオリ?」
一人でそんなことを考えていたら、直樹に声をかけられてボーッとしていたのに気付く。
外はいつの間にか雨が降りだしてきていて。
明、濡れないで帰れたらいいけど…
結局その後になっても明は姿を現さなくて。
心配する朋子に、きっと寝てるんだよ。と直樹がフォローしていたが、そう言う直樹も心配そうだった。
家が近くのアリサちゃんが、帰りに様子を見に行ってみると言うことでその日は解散になった。
「香、明くん風引いて寝込んでるんだって。」
あたしが朋子からそのことを聞いたのはあの日から3日後のことで。
「3日も寝込むなんて…
ひどそうだね。」
「お見舞い、行かない方がいいかな。」
きっと気使わせちゃうだけだし。と呟く朋子に、
「アリサちゃんにお願いして、物だけ届けてもらったら?」
朋子はそうしてみる。と頷いてアリサにメールを打っていた。
ほどなくして返信が返ってきたようで。
メールを見ていた朋子の手が固まる。
どうかしたの?
と目で尋ねると、朋子は無言で携帯を見せてくれた。
from:高梨ありさ
心配してくれてありがとう<(_ _*)>
明、やっと元気になって。あたしも3日ぶりに自分の家に帰って来ましたv
お見舞い渡しに行くなら家まで案内するから連絡ちょうだい?
それじゃまた☆
ありさらしい絵文字がたくさん入ったメールで、何を朋子が気にしているのか最初は分からなかった。
あ、3日ぶりに帰るってことは…
「3日間ずっと明くんと一緒だったってこと?」
朋子はコクンと頷く。
「…分かってるんだけど、アリサちゃん別な人好きって知ってるんだけど…」
下唇を噛み締めてうつ向く朋子。
「でもちょっとひっかかる、でしょ?」
言葉を付け足すと、朋子はまた首を小さく縦に振る。
そりゃ気になるでしょ。