tomoka 13
あたしでは引き出せないその笑顔を、いとも簡単に引き出してしまうアキラが羨ましかった。
今日のアキラくんもカッコ良かったの、と興奮して話す朋子に相槌を打ちながら、あたしの意識はアキラの後ろ姿に向かっていた。
いったいどんなヤツなんだろう。
どうしてあの時、あんな目をしていたんだろう…
聞いてみたいことはたくさんあって。
もう少し、アキラに近付ければいいのに。
朋子と話ながらオムライスを食べて。
化粧直しにトイレに向かう。
「…カオリ?」
その声に反応して立ち止まると、驚いた顔をした直樹がいて。
そこで初めて、あたしは直樹とアキラが二人でいるところを目にした。
あたしが直樹と話している間も、あの視線を背中に感じる。
思いきって振り向くと、あの時とは違って柔らかい顔のアキラがいた。
「初めまして、じゃないよね?」
あたしは頷く。
正確に言うと、あなたを見たのは4度目だけど。
アキラにとっては2回目なんだろう。
「…えっ、二人供知り合いだった?」
驚いた顔をしてあたしとアキラの顔を見比べる直樹。
曖昧な表情を浮かべるアキラ。
その表情から、あの時のことは喋らない方が良いと判断したあたしは口を閉ざす。
「でも、何で俺が直樹の友達だって分かったんだ?」
きっとずっと考えていたであろう疑問をアキラは口に出した。
何て説明したら良いんだろう。
あたしの友達があなたのこと好きでね?
直樹から聞いてさ。
あたしがどう言うべきか考えていたら、肩を叩かれて。
「あんまり遅いから心配したじゃない。」
振り向くと笑顔の朋子が立っていた。
「朋子の友達?」
初めて驚いた顔をするアキラ。
やっと線が一本に繋がったみたいだ。
それから、あたしと朋子は買い物に行くから、と言って先に出ようとしたらアキラと直樹も出るようで。
外で軽く挨拶をして二人と別れた。
「香、家来ない?」
聞きたいことが色々あるの。とあたしの目をまっすぐ見つめる朋子の誘いを断れるわけもなく。
うん、と頷いて朋子の後ろを着いて行く。
朋子が住んでいるのは、学校から歩いて10分くらいのところにある、アパートの3階で。
朋子の部屋を包む、女の子らしい香りがあたしは好きだった。
居間兼寝室に通されて、コタツはもう片付けてある机の側に腰を下ろす。
「香は、紅茶とコーヒーどっちが良い?」
紅茶をお願い、と答えてから、これから何を聞かれるのか少しビクビクしていた。
朋子のことだからいきなり怒ったりはしないと思うけど…。