大好き 1
俺の高校には、小さくて可愛い同級生がいる。その同級生に恋をしてしまった。
ドキドキする。
ただ、側を通っただけだというのに……。
日比谷裕樹は高鳴る胸の鼓動に苦笑していた。
バイト先で知り合いになった奴、生瀬カインの事が気になっていたからだ。
日比谷より頭ひとつ分ほど低い身長に繊維質な薄茶色の髪。透き通るような白い肌。そして人を射貫くような大きくて強い意思を抱く眼差し。綺麗だ、な。
生瀬の全てに気が向いてしまうらしい。日比谷は今日もまた気がつけば生瀬のことを見つめていた。ただただ、レジのとこから棚の整理をする彼をいつの間にか目で追っている。そんな日々が続いて数日目の今日この頃。胸の高鳴りを気にしないようにしていても、一緒に居るだけで、そう思うだけで日比谷は仕事に身が入らなくなっていた。
"?どうしちまったんだ・・・オレ・・"
「ヤ、ヤベェ……」それは今朝がたのことだった。
ひっそりとした夜明け前、裕樹は股間に広がる湿り気に気づいて、あわてて前立てに手を突っ込んだ。
早朝の暗がりの中、灯かりを点けて確かめずとも、なぜにアンダーが濡れたかくらい、容易に察しがついた。
裕樹は自身にあきれ返り、ティッシュボックスに手を伸ばした。
17歳といえば、男が一生のうちで最も精力旺盛といわれる時期なのは、裕樹とて保健の授業で知っていた。
そんな時、起き抜けに夢精したからといって、特別騒ぎ立てることでもないのだと、体育の講師は言っていた。
それでも見た夢の内容によっては、少々話は違ってくるのは誰に教わらずとして、裕樹にも分かっていた・・・。
女子との色恋沙汰にはとんと疎く、ろくに彼女も持たずにこれまでを過ごしてきた裕樹ではあるが
それは、同性である男に対してときめく性癖を持っている訳では決してなかった。
それなのに・・・・
裕樹は"生瀬カイン"に対して抱く、自分の初めての衝動に困惑せずにはいられなかった。
"気の迷いだ!ただ思考が妙な方向に傾いただけに決まってる!"
裕樹はそう自分を言い聞かせるように、AKBのグラビアを開くと
夢精したにも関わらず、朝の昂りを示すその頂きを握りしめ、自分は正常な男であるということを確かめた。
(・・・・・・ ・・ ・・・・・ ピュ!☆)
白いビキニ姿の佐藤 亜美菜で、無事にコトを終えることのできた裕樹はホッと胸を撫でおろした。
ゴメンゴメン。あみなちやんを一瞬でも裏切ったオレを許してくれぇ〜chu!
こうして日比谷裕樹はその日、同性である生瀬カインとの良からぬ行為を想像して、夢精に到った事実を誤魔化した。
けれどもその興奮は、脳は忘れるはずはなかった。