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恋愛リレー小説 - 同性愛♂

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nao 90

 後輩の女の子に花束なんか渡されちゃって。ハニカミながらもありがとうとか言っている直樹。

 見ていられなくなった俺は、その輪から遠ざかるようにフラフラと歩き出す。


「アキラ」
―どうしてコイツに名前を呼ばれると、どうしてあの人の顔を思い出すんだろう。
「よぅ。」
 声の方に振り向くと、予想通りの青い袴に身を包み、人ごみを縫って俺の方に向かってくる香がいた。
「ちゃんと来たんだね。」
「まぁ、お前に言われたから来たわけじゃないけど。」
「分かってるよ。」
 
 そう言ってクスッと笑うしぐさが、大人のそれのようで。ガキ扱いされてるみたいで落ちつかない気分になる。
「今日はどうするの?」
「とりあえずグループのヤツと飲むかな。」
「ナオキも一緒?」
「いや、アイツは始めそっちの飲み会に顔出すって言ってたぞ?」
 飲み会大好きなアイツのサークルが、こんなイベントを外すことなんて考えられなくて。式が始まる前に聞いてみたところ、やっぱりあるみたいだった。
「そっか。」
「香も行くんだろ?」
「うん。その後はトモコと飲もっか。って話してたんだ。」
 
 嬉しそうにそう告げる香に、つい俺は聞いてみたかったとを口にしてしまった。
「…香は言わねぇの?」
「え?」
「あ、いや…」
「トモコに?」
「…あぁ。」
 立ち入ったことを聞いてしまった自分が悔やまれたが、ずっと興味があったのも本当だ。
「あたしはあのコが笑っててくれればそれでいいから。」
「…そか。」
「アキラは?」
「へ?」
「言わないの?アイツに。」
 思わず香の顔を直視してしまう。
「ずっと引っかかってたんだ。アキラの視線の先。トモコかと思ってたときもあったんだけど、なんだかしっくりこなくて。でもさっきやっと分かった。」
 
「後悔、しないようにね。」
 そう言って、これでもかってくらいの極上の微笑みを残して、人の輪の中に戻っていく香の後ろ姿を見送る。


「女ってスゲェ。」
 ポツリと呟いた俺の背後に気配を感じる。

「やっとあたしの偉大さに気づいた?」
「…アリサか。」
「今日どうせ朝まで飲むんでしょ?」
「あぁ。」
「引越しはいつ?」
「明後日。」
「手伝い行くね。」
「お前は引っ越さねぇの?」
「あ〜、うん。引っ越すけどまだ先だからダイジョウブ。」
「へぇ。」
「あっ、それでコレ。」
 そう言ってアリサがカバンからゴソゴソと取り出したのは、青い色の封筒だった。

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