nao 1
―いつからだろう。
こんなに人を好きになったのは…
―いつからだろう
アイツじゃなきゃ駄目になったのは…
「直樹!」
立ち止まって振り替えるアイツ、直樹は俺の親友。
「おはよ」
朝から爽やかすぎる笑顔。野郎の笑顔にトキメクなんて、昔の俺だったら考えられなかった。
「今日のさ、レポート終わった?」
朝から直樹に会えたのが嬉しくてしょうがない。が、そんな態度を隠すように困った表情を繕う。
「あー…実はまだ終わってないんだ。明は?終わったとか?」
本当に困ったような顔で小首を傾げて尋ねるアイツ。なんでそんなしぐさが一々かわいいかな…
「俺が終わってるわけないじゃんかよ。」
苦笑混じりで答える俺、高橋明。直樹と一緒の大学・学部・学科で、グループも同じ。
ちなみに直樹のフルネームは田辺直樹。
直樹とは1年の時から一緒に飯食ったり、勉強したりする仲。
アイツはそれだけだと思ってる…はずだ。
「良かった。2コマ終わったら一緒にやんない?」
「だな、二人でやればすぐ片付くし。」
二人で勉強…
考えただけで頬が弛みそうになるのに気付き、慌てて真面目な顔を取り繕う。
俺の隣で真剣な顔でノートを取るアイツ。
もちろん俺も取ってる。だけど隣が気になってイマイチ集中できない。
直樹は、誰にでもその物腰の柔らかさを変えない。コイツのこと嫌いなやつなんていないんじゃないのか…?って思うくらいイイヤツだ。
だから女の影は絶えない。直樹自身は本命はいないみたいだけど………
はぁ。気付くと溜め息が出てたみたいだ。
アイツがチラッと俺を見て、どうした?って顔をしてる。
俺は曖昧な笑顔を作って、大丈夫だ。という顔を作った。
でも心の中じゃ、この気持を言ったらアイツどんな顔するだろ…
もう友達じゃいられないよな。
そんなネガティブな事ばっかり考えてしまう。
原因はお前なんだよ!って言えたら、きっとスッキリするんだろうな…。なんて投げ遣りな考えまで浮かんでくる。
でも一番嫌なこと。
―もしこの気持ちを伝えて、アイツといれなくなったら?
って考えると、そんな考えも一気に吹き飛ぶ。