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nao
恋愛リレー小説 - 同性愛♂

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nao 78

「ううん、あたしもさっき着いたばっかりだから。」
 大丈夫だよ?と言って笑う彼女に、俺はしばらくの間見とれてしまう。
 付き合い始めてもう2ヶ月は過ぎたとゆうのに、まだ片想いの頃のように彼女を想ってしまうんだ。
「直樹くん?」
「あ、ゴメン。ちょっと見とれてて…」
「何に?」
「や、うん。あっ今日雪降るかな?」
「んん、どうだろうね。降ったら嬉しいけど…」
 何かを期待するように空を見上げる朋子ちゃん。冬の空気と彼女の雰囲気は、とてもよく合うと俺は思った。
「ね、今日みんな何してるかな。」
 思い出したように俺の方を向くとそう尋ねる朋子ちゃん。さっきまでの儚げな表情は消え、イタズラそうな瞳が俺を映す。
「そういえばありさね、実家に帰りたくないんだって。」
「ふ〜ん。どうして?」
「遊ぶ人だれもいないから。」
「はは、それありさちゃんらしいね。あっでも明も実家帰るって言ってたよ?今忙しいのかな。」
「明くん?明くんは帰らないみたいだよ。」
「え?」
「地元に帰ってもやることないからって。誘っても断られたってありさ嘆いてたもん。」
―ごめんな。実家から招集命令出てんだよ。―
明…なんで?
「直樹くん?」
「あ、ごめん。ボーっとしてた。」
 せっかく朋子ちゃんとデートしてるのに。こんなんじゃダメだって思ってるのに。頭の中は明のことでいっぱいだった。
「気になるなら行ってみたら?」
「え…」
「明くんのこと。気になるんでしょ?」
 全部顔に書いてあるよ、と言って笑う朋子ちゃん。
「いや、でも今日はさ、」
「クリスマスは今日だけど、でも明日もあるし。それにあたし…待ってるから。」
「朋子ちゃん…」
 彼女の気持ちで胸がいっぱいになってしまって。…言葉に詰まった。
「ね?」
「…分かった。ごめんね?本当すぐ帰ってくるから。寒くないところで待ってて?」
「うん。いってらっしゃい。」
「…いってきます。」
 いってらっしゃいってイイ響きだよな。朋子ちゃんに見送られながら、俺はそんなことを考えていた。


 駅からの通い慣れた道を歩く。ここを通るのも久しぶりな気がした。今日の天気はどんよりした曇り空で。どうせなら雪が降ってくれればいいのに。と呟いた彼女の言葉を思い出す。
 目的地が見えてくると、自然と歩調が早まるのが分かる。早く明の顔が見たかった。


ピンポーン………インターフォンを鳴らすが、出てくる気配がまったっく感じられない。仕方ないから何度も鳴らしていたら、ドスドスという音に続いて、ドアが勢いよく開けられた。
「はい。……直樹?」
「明、メリークリスマス」
 予想していたよりも元気そうで少しホッとする。
「どうしたんだよ。」
「明が一人でいるって聞いて。遊びに来た。」
「…バカ」
 呆れたようにそう呟く明。
「バカはないだろ。朋子ちゃんも心配してたよ。」
「アホ」
「…どうしたんだよ。明」

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