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nao
恋愛リレー小説 - 同性愛♂

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nao 73

 どうしよう、やっぱり今日はやめとくのもありだよな…
頭の中がうまく整理ができなくて、ここから逃げ出してしまいたい衝動に駆られる。
─お前はちゃんと言ってこいよ?
モヤモヤした頭の中に明の声が響く。


「…心配されなくてもちゃんと言うって。」
…だからそんな顔しないでくれよ。
 公園の中を風が一筋道をつくる。紅葉にはまだ早く、おそらく桜と思われる木には、紅く染まりきれていない葉がサワサワと揺れていて。ベンチに座りながら、俺は葉が紅くなっていく様子を眺めていた。
「直樹くん、」

そう言って、小走りに走り寄って来てくれる彼女の律儀さが微笑ましかった。
「ごめん、待たせちゃったね。」
そう言ってうつ向く彼女のしぐさが可愛らしくて、しばらくの間その姿にみとれていた。
「……あ、いや全然だから。俺も今来たとこだし。」
 やっとのことでそれだけ返すと、朋子ちゃんはホッとしたような笑顔を見せてくれた。
─本当に、この笑顔が大好きなんだよ。
自然に沸き上がってきた感情に蓋をつけて塞ぐことは、もう出来なかった。
「好きなんだ。」
目の前にいる彼女がキョトンとしているのが分かる。
それでも一度溢れ出た気持ちは止まらなかった。
「俺、朋子ちゃんのことが好きなんだ。」
 真っ直ぐに彼女の瞳を見つめながら、一言一言に気持ちを込めて伝える。
その顔に驚きと共に浮かんだ戸惑いの表情に、俺は気付かないフリをして続ける。
「…ずっと、好きだったんだ。」


「…あのね、あたしね」
「返事は、…返事は今は言わないで。」
彼女の口から否定の言葉を聞くのが怖くて、俺はそう言うのが精一杯だった。



 彼女の前から逃げるようにして立ち去ると、車を飛ばして家まで帰る。
 朋子ちゃんの泣き出しそうな瞳が目に焼き付いて、この日俺は眠れなかった。



 マブタが重い。体が動かない。頭がグラグラする。
 どうしたんだっけ俺。

 頭の中に、鮮やかな紅い色がフラッシュバックする。

 あ…そっか。昨日朋子ちゃんと会って、それから…

 昨日俺が目にした瞳が俺に訴えかけてくる。
 朋子ちゃん、大丈夫だったかな。あんな顔をさせたかったわけじゃないのにな…
 彼女の前から逃げて来てしまったことを、俺は後悔した。



 
 それから2週間、バイト先で朋子ちゃんに会うことはあったけど、話すことができないでいた。
 

「直樹くん、」
 制服に着替て、更衣室を出たところで声をかけられる。その声に振り向くと意外な人が立っていたんだ。
「朋子…ちゃん?」
「今日直樹くん早番だよね。その後って何か予定あった?」
「特にはないよ。」
 久しぶりの彼女に嬉しさを抑えられていないのが自分でも分かる。
「それじゃ終わったら一緒に帰らない?」
「、もちろん大丈夫だよ。」
「それじゃあ、また携帯の方に連絡するね。」

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