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nao
恋愛リレー小説 - 同性愛♂

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nao 69

そう言ってあっさりと引き下がった、ヤツに俺は少し驚いた。
もっとああしろこうしろと言ってくると思ったのに…


─そろそろアイツ来るんじゃないのか?
そう言われて時計を見ると、確かにそろそろ来てもいいころだった。
部屋の中を見渡してみるが見られてマズイものは無さそうだった。


─と、耳慣れた電子音が部屋に響く。
来たか。覚悟を決めて玄関まで行くと扉を開ける。


「おはよ。」
「…はよ。」
入ったら?という意味を込めて少し体をずらすと、お邪魔しますと言って直樹は中に入ってきた。
久しぶりの直樹。
いつもどおりのアイツの匂い。


当たり前のことがなんだか嬉しかった。
「明の家ってさ、」
「ん?」
お茶をグラスに注ぎながら、居間でくつろいでいる直樹の問いに答える。
「コタツって年中出してるの?」
「…や、冬場だけ。俺はめんどくさがりだからさ。」
コトッとコタツの上にグラスを並べて俺も座る。
「そっか。」
「…いっつも見る度にさ」
「ん?」
「片付けなきゃなとは思うんだ。」
「でも片付けないでくれた方が俺は嬉しいかも。」
「そう?」
「うん…だって明の家のコタツ寝やすいからさ。」
「ちゃんと布団干してるからな。」
─お前のために。
「だからか。いっつもいい匂いしてるもんな。…もしかして、それって俺のため?」
「へ?」
「…なわけないか。」
「当たり前だろ。」
一瞬、心の中を読まれたのかと思ってすげぇ焦った。
いっつも鈍いのに。変なとこ鋭いんだからなぁ…
気分を落ちつけるために、グラスに口をつける。
珍しく直樹はまだ飲んでないみたいだ。いつもなら真っ先に手をつけてくれるのに…


「あのさ、」
「どした?」
「明、最近俺のこと避けてた?」
「…」
やっぱりバレてたか。
しばらくの間直樹と距離を置こうと思っていたんだけど、しっかりバレていたらしい。
直樹だけじゃなくて、朋子ともだけど…。


「…やっぱりそうだったんだ。」
「…ごめんな。」
そう言って視線をコタツの上に落とす。直樹は、そんな俺には構わず先を続けた。
「俺さ、最近朋子ちゃんから相談されたりして。よく2人で話しとかするんだよね。」
直樹と朋子が?思わずハッと顔を上げるが、慌てて視線をずらす。
「朋子ちゃん言ってた。明には幸せになって欲しいって。だから好きな子とうまくいって欲しいって。」
「…そっか。」
あの時、朋子が最後に俺に見せてくれた、あの笑顔が脳裏をよぎる。
朋子、いいやつだな…好きな人のことは勘違いしたままだったけど。
「明さ、」
「…ん?」
アイツの言葉で意識を戻すと、目の前にいたのは真剣な顔をした直樹だった。
「本当のこと言ってくれないか?」
「…え?」
「遠慮されるのはもう嫌なんだ。」
「何のことだ?」
アイツは深呼吸を一つすると覚悟を決めたのか、口を開いた。
「朋子ちゃんが、明には幸せになって欲しいって言った時、俺分かったんだ。ワガママ言ってたのは俺だった…って」

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