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nao
恋愛リレー小説 - 同性愛♂

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nao 66

あの時は大学に入りたてで、初めての一人暮らしで何をどうしたらいいか分かんなくて…
思わず明に電話した時に口から出っちゃったんだ。
そしたら明、すぐ家まで来てくれて─


「…明?」
深夜に鳴ったインターフォンの受話器を取ると、耳に入ってきたのは大学に入ってから一番聞いていた声だった。
それでもまだ信じられなくて、返事もそこそこに玄関のドアを開ける。
そこには心配顔の明が立っていて、俺はその顔を見たら何も言えなくなったんだ。
「…どうしたの?」
やっと出た言葉がそれで、自分で舌打ちしたかった。

「ん、暇だから遊びに来た。」
そう言って笑った明に俺は救われたんだ。
あの時明がいてくれなかったら、きっと俺はもっとダメな奴になってたと思う。


だから今度は俺の番だろ?
そこまで考えると、シャワーを止める。
水に近いシャワーを浴び続けていたせいか、全身に鳥肌が立っていた。
不思議と寒いという感覚はなくて、頭だけがやけにスッキリしていた。
乾いたタオルで全身を拭くと服を身に付けてから自分の部屋に戻る。
携帯の履歴から明を探すと電話をかけた。


呼び出し音が耳に響く。やっぱり出てくれないかな…
電話で連絡を取るのを諦めると、メールでこれから明の家まで行くことを伝えた。
クローゼットの中からストライプのシャツと焦茶のパンツを選ぶとそれに着替える。
クローゼットの内側についている鏡で全身を確認すると、机の脇に置いてあるシルバーの棚の上からお気に入りの香水を手に取った。

─そういえばこの香り、明も好きだって言ってくれたっけ。
青いシンプルなボトルを見つめたまま、初めて香水をつけて学校に行った時のことを思い出した。


「…あれ、直樹今日なんかつけてる?」

朝から一緒の授業を隣で受けていた明にそう尋かれる。
「あ、分かる?つけすぎたかな…。これ昨日アニキがくれてさ。」
その前の日に20才になった俺に、アニキが買ってくれたんだ。
『いいオトコになりたかったら、匂いにも気を使った方がいいぞ?』とかなんとか言われて。
その言葉に乗せられてつけたものの、変じゃないか少し不安だった。
「いや、なんかすげーいい匂いじゃね?俺好きかも。」
「マジ?…そう言ってもらえると嬉しいかも。」
「兄弟いると、そういう時いいよな〜。俺も兄ちゃんか姉ちゃん欲しかったよ。」
「明って、一人っ子には見えないよね。」
「そうか?俺チヤホヤされないで育ったからなぁ。」
そう言って涙を拭くマネをする明が面白くて、最後は二人で笑ってたっけ。


─考えてみると大学に入ってから、ずっと明と一緒だった。
当たり前のようにいつもいてくれたから気付かなかったけど。明がいないと、俺…


ダメだ!やっぱり早く会いに行かないと。
こみあげてきた感情を押さえつけると、車の鍵と携帯、財布をズボンのポケットに入れて部屋を出る。
居間に寄ると、朝食の準備をしている母さんに出かけることを伝えた。

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