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nao
恋愛リレー小説 - 同性愛♂

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nao 65

そう言ってボトルを差し出すと、二人は上機嫌にコルクを抜きだした。
…逃げるなら今しかない。そろそろと後ろ向きに部屋を退散すると、居間の扉を閉める。
2階へと続く階段を素早く上ると、自分の部屋に滑り込んだ。階下の物音に耳を澄ませたが、別段異常はないようだった。
無事部屋まで辿りつけたことにホッと溜め息を吐くとベットに倒れこむ。
風呂にも入りたかったが危険は犯せないし…明日の朝まで我慢することにした。
残った力で部屋着に着替えると、急に睡魔が襲ってきて。今夜はそれに逆らうことなく眠りに落ちた。


「直樹」
呼ばれ馴れた俺の名前。振り返った先にはいつもと変わらない明がいた。
そのことがなんだか嬉しくて明に走り寄る。
「直樹、俺さ」
走って近付いているはずなのに、縮まることのない距離。
どうしたんだよ?うつ向く明に遠くから声を投げ掛ける。俺の声が白い部屋に木霊みたいに響いた。
「俺、やっぱり付き合うことにしたんだ。」
…誰と?
「ごめんな…」
ちょっと待ってくれよ!明?


「あきら!!!」
ガバッと体を起こすと辺りを見渡す。
…あれ?

さっきまでいたはずの白い部屋の代わりに、俺がいたのはシルバーの家具で統一された自分の部屋だった。
「やっぱり無理してんのかな…あきら。」
誰よりも友達思いの明が、友達が好きな子と付き合うとは考えられない。
だから俺から諦めなきゃ、だよな。
そうすれば朋子ちゃんだってあんな顔しないで済むし、きっとまた俺の大好きなあの笑顔で笑ってくれるだろ。…大好きだった、だよな。


気付いてたんだ。朋子ちゃんが見てるのは俺じゃないってこと。
視線の先に誰がいるかも。
ズルイよな…俺


側にいれば朋子ちゃんこっち見てくれるんじゃないかって、そう思ってたんだから。
罰が当たったんだなきっと。

明に俺の気持ちちゃんと伝えよう…それで朋子ちゃんのとこに行こう。
ここしばらくの明の様子から避けられていることは感じていたが、今日は会える気がした。


冷たいシャワーを頭から浴びながら、明の反応を想像してみる。
呆れるかな…明。
顔も合わせたくないぐらいなんだからよっぽどなんだろう。

そう考えると、会いに行くのがたまらなく怖くなったが、ここで逃げたら友達でいられなくなる気がして…自分を奮い立たせる。


─俺って情けないよね。

─こんな自分嫌いだよ。
昔、自分で言った言葉が頭をよぎる。

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