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nao
恋愛リレー小説 - 同性愛♂

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nao 64

振動で目を覚ますと、周りの乗客は帰り支度を始めていた。
俺も慌てて身体を起こすと、お茶の入ったペットボトルをカバンにしまう。


明、誰のこと好きなんだろ。
やっぱりもう一回、向き合わないとダメだよな。
今度は明の話、ちゃんと聞こう。そう心に決めて俺はバスを降りた。


俺が住んでいるのは、大学がある県の隣にある県で。
高速バスで2時間弱で通えることから、キャンパスが変わったことを期に実家に戻った。
一人暮らしは気楽でいいけど、家事が出来ない俺にとっては家から通ったほうがいいと思ったんだ。
その判断は間違ってなかった、と思う。おかげで就職も決まったし、卒業もほぼ決まったようなものだ。
でも、俺が卒業出来る一番の理由は明だ。もし明がいなかったら、俺の学生生活はいろんな意味で散々だっただろう…


─あの時明がいてくれなかったら、俺は学校辞めてたかもしれないし。
…だから明にはすごく感謝してるし、誰よりも大事な友達なんだ。


駅前の駐車場に停めておいた車に乗り込むと、キーを回す。
親父からもらったこの車には、ずいぶんお世話になった。
燃費が悪いから、学生の俺には出費が痛いんだけど。

耳慣れたエンジン音が俺を包みこむ。
この感覚に昔は馴れなくて戸惑ったけど、今ではすっかり生活の一部になっている。
昼の天気がいい日に走るのもいいけど、夜のドライブはまた格別で。
いつか彼女を助手席に乗せて、俺の大好きな故郷の景色を見せてあげたい…そんなことがささやかだけど俺の夢なんだ。


窓を少し開けると、秋になったことを教えてくれるような風が入ってくる。
それを心地よく感じながら家へと車を走らせる。気付くとずいぶん近くまで来ていたようだった。


俺の隣に、朋子ちゃんが乗ってくれる日なんて来るのかな…
そんな日が来ることを願いつつ、車のエンジンを止める。
─兄貴来てるんだ。
駐車場に停められた青いスポーツカーを横目で眺めながら、そんなことを思う。
ってことは…


なかば確信的な思いを胸にやどらせながら玄関を開く。
「ただいま。」
家族に届くことは期待しないでそう告げると靴を脱ぐ。
靴の向きを揃えてから居間へと向かった俺の視界に、予想していた通りの光景が入ってきた。


「おっ直!帰って来たか〜」
テーブルの上には焼酎のボトル。
テーブルを挟むように配置されたソファー。そして向かい合ってそれに腰を下ろしす二人の男。その内の一人が俺にそう告げた。

「うん。兄貴も来てたんだね。」
と言って二人の脇をすり抜けると、台所へと逃げ込む。あの二人に捕まったら、どうなるかなんて目に見えている。
なんとか穏便に自分の部屋へ帰る方法を考えていると、居間から俺を呼ぶ声がした。
「直樹もグラス持ってこい。」
親父明日は仕事だろ!心の中で突っ込むと、グラスの代わりにワインのボトルとオープナーを持って行く。
「こんなのもあったみたいだよ?」

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