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nao
恋愛リレー小説 - 同性愛♂

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もう一つ付け加えるとしたなら、元カノの妹ってところだろうか。

「今日はどこ行く?」

明の沈んだ様子に気づかないフリをして、あたしは切り出す。
飲みに行こうと誘われる日は、何か嫌なことがあった日で。
そんなときは何も聞かずに朝までとことん付き合うのがあたしの役割だった。

「道頓堀でいい?」

その答えから、今日は本当に潰れたい日なんだと感じる。
道頓堀は大学から歩いて15分くらいのところにある居酒屋で。
焼酎が安く飲めることで有名なお店だった。


顔色を変えずに頷くと、あたしたちは肩を並べて歩き出す。

─今日はどうしたの?嫌なことがあったんだったら全部聞くから言っちゃいなよ?
尋ねることのできない問いを真っ暗な空に浮かべてみる。
あたしからは何も聞かない。それがあたしの決めたルール。

焼酎のロックを立て続けにあおる明を見ていると、胸が苦しくなってきて。
側にいることしか出来ない自分が歯痒かった。
明はお酒が強いからめったなことじゃないと悪酔いはしない。
飲んでも飲んでも消化できない思いを振り切るように、明は首を振った。

思ってるだけでいいって、アイツが幸せならそれでいいって思ってたのに。

アイツのことが好きだっていう気持ちを、だれにも認めてもらえないだけ、それだけなのに。
なんでこんなにシンドイんだろ。

始めから分かってたことなのにな。

どうしてこんなに泣きたくなるんだろ。

手が無意識の内に携帯の履歴を探していて。
その一つに電話をかける。
今夜も一人では過ごせそうになかった。


心の中で感謝を述べて酒を飲み下す。
旨いかなんて問題じゃなくて、意識を飛ばしたかったんだと思う。
俺の記憶があるのはそこまでで。
かすかに誰かに支えられながらトイレに行ったような気もしたが定かではなかった。

次の朝、というか昼に目を覚ますと頭が持ち上がらないほど重くて。起き上がることを断念してそのまま枕に突っ伏す。
無意識の内に枕元に置いてあるはずの携帯に手を伸ばしたが、俺の記憶と手の感触が食い違っていて。

違和感を感じてまぶたを開くと、どうやら自分の部屋ではないようだった。

「起きた?」

遠くの方から聞こえるアリサの声で、自分がどこにいるのかを悟る。

「わりぃ、また布団占領しちゃったな。」

「ご飯食べるでしょ?味噌汁作ったから一緒に食べよ。」

俺のことばを軽く流してそう言ったアリサの言葉に胃袋が反応して。

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