nao 59
応援するね?って誰とのことを??
話の流れからいっても直樹のことじゃないよな…
おいおいおい、ちょっと待ってくれよ。
─でも、トモコも元気になったんだし良かったんじゃないのか?
それは、そうだけど。
─ここで変なこと言った方が厄介なことになりそうだぞ。
いや、そうなんだけどさ。
「はぁ…。」
トモコの家を出て、一人になったところで溜め息を吐く。
外はもう真っ暗で。
どこに行くかも分からない道をひたすらに歩く。
「一番大事な人だって言ったよな、俺。」
夜道で誰にともなく呟く。
もちろん誰かがいてくれるわけなんかなくて。
中ぶらりんになった疑問は、歩いている俺の周りをぐるぐる回る。
今度はちゃんと自分の気持ち伝えられたって思ったのにな…
やっぱり考えらんないのかな。
男の事が本気で好きだなんて。
俺、おかしいのかな。
間違ってるのかな。
心が苦しくて。
好きならそれでいいって思ってたはずなのに。
思ってるだけでいいって、アイツが幸せならそれでいいって思ってたのに。
アイツのことが好きだっていう気持ちを、だれにも認めてもらえないだけ、それだけなのに。
なんでこんなにシンドイんだろ。
始めから分かってたことなのにな。
どうしてこんなに泣きたくなるんだろ。
手が無意識の内に携帯の履歴を探していて。
その一つに電話をかける。
今夜も一人では過ごせそうになかった。
だからあたしは自分を守るために、その人を本当に好きになる前に諦める癖をつけた。
ずっとそれを守っていたのに、守っていたはずだったのに。
いつからだろう。自分の気持ちに蓋を出来なくなったのは…
「ありさ」
自分の名前を呼ばれた声に反応して、あたしは後ろを振り返る。
─と、あたしの視線の先には、12歳の頃から腐れ縁の男が立っていて。
この男、高橋明とはもうずっと一緒で。
あたしの苗字が高梨だから、中学の入学式であたしの次に明が呼ばれたのが、そもそもの始まりだった。
男だから女だからっていう意識が芽生える前からずっと友達だったから、大学生になった今でも、明はあたしに対して遠慮はしない。
もちろんあたしも明が男だから、なんて考えたことはない。
悪友で、お酒仲間で、相談相手で。
明にとってあたしはそんな存在のはず。