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恋愛リレー小説 - 同性愛♂

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nao 57

菜々子のことは、今ではいい思い出になってる。

俺の頭は複雑に出来てないから、一度に二人の人の事なんて思えないしな。
そう、気持ちを込めてアリサを見つめ返す。

「そっか。」

アリサは少し寂しそうに微笑むと、トモコの家までの道を教えてくれた。

「サンキュ」

コンビニの2軒隣に立っているそのアパートは、2階立てだがしっかりした造りで。
郵便ポストに書いてあるトモコの名字を確認すると、階段を上がる。
チャイムを鳴らす時になって、ふと考えた。

─都合とか聞いとかなくて良かったかな?


ドアの前で考えこんでいたら、不意にドアが開いた。

ガンッ

「ってぇ〜」

頭を押さえてうずくまる。

「…アキラくん?」

久しぶりに見たトモコは一回り小さくなったようで。
とりあえずぶつけたとこを冷やすために中に入れてくれた。

「…ごめんね。」

氷を入れたビニールの袋でおでこを冷やしながらトモコに目をやる。
そんな済まなそうな顔をされたら怒る気にもなれなくて。

「大丈夫、オレ頭固いから。」

と言って笑うと、トモコも少し笑みを返してくれた。

「あのさ、」

今日来た目的を話すべく口を開く。
俺の口調から何かを感じたのか、トモコは目を反らす。

「最近バイト休んでるんだろ?
直樹から聞いて…。
でも元気そうで良かったよ。」

お見舞い持ってくれば良かったな、と呟く。

「気使わなくていいよ?」

「や、でも俺の時持って来てくれたし…」

「違くて…カオリから言われて来たんでしょ?」

反らしていた目をこちらに向ける。
色素の薄い瞳が俺を映す。
たよりない瞳が答えを求めるように揺れた。

「カオリから言われたから来たわけじゃない。」

一言一言を噛み締めるようにトモコに伝える。

「アイツが、直樹がすげぇ心配してて。」

「俺、そんなアイツ見てるだけの自分が嫌だったから。」

「あたしね、」

あたし…と言って、言葉を探すトモコ。
おそらく化粧をしていないと思われるトモコの睫毛が震える。

「…トモコ?」

俺の声に反応して上げた顔に、涙の筋が出来ていて。

「好きなの」

堪えていた涙と一緒に出てしまった言葉。

「アキラくんのことが、好きです。」

肩を震わせながら絞り出すような声で気持ちを伝えたトモコ。
その真っ直ぐな気持ちに、ウソはつきたくなかった。

「…オレさ、ずっと忘れられない人がいて。」

うつ向いて聞いているトモコに目をやりながら言葉を選ぶ。

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