nao 6
案の定、タクシーから出るのも大変そうなアイツの手を引っ張り出して、運転手に代金を払ってやる。
後でちゃんと請求してやんなきゃな…と思いながら、アイツに肩を貸してやりながら家の中まで連れていく。
俺の家は、ロフトが付いていて、友達は下に寝てもらうのが常だった。
まだ4月ということもあって、出してあったコタツにアイツを寝せてやる。
とりあえず一息つく。
まさかとは思ったが、一応枕元にコンビニの袋を置いておいた。
ふと喉の渇きを覚えた俺は、冷蔵庫を開けてお茶を飲んだ。
その時に俺は、このお茶を直樹が好きだったことを思い出して。
寝てるとは思いながらも声をかける。
「直樹も、飲むか?」
んん、と肯定とも否定とも取れる声がしたので、とりあえずアイツのとこまでグラスを持って行った。
その時は2時を少し越えた頃で。
当たり前だけどまだ外は暗かった。
明かりをつけておいたけれど、少し絞った照明にしておいたせいか、部屋の中は少しボンヤリとしていた。
「ほら、これ…」
お前の好きなやつだぞ。と言いかけて口を閉ざした。
なぜか?
それは、俺は気付いてしまったから。
直樹の、アイツの寝顔に見とれてる自分に。
その後のことは良く覚えていない。
朝起きると、俺はロフトでちゃんと寝ていて。
コタツの上にはお茶のグラスが手付かずのまま置かれていた。
昨日、自分が感じた感情が何なのか…
俺は分かっていながら気付かないフリをした。
アイツを困らせたくなかったし、何より側にいれなくなるのが耐えられなかった。
ロフトから降りて、顔を洗う。
アイツ用のタオルを出しておいてから声をかける。
「直樹、10時過ぎたけどいいのか?」
アイツは寝覚めがすこぶるいいため、朝に悪態をつくことがない。
朝が弱い俺としては、見習いたい限りだ。
端正な顔を少し歪めて起き上がると、いつもの直樹だった。
「おはよう、明」