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恋愛リレー小説 - 同性愛♂

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一緒に来てるんだったらハンカチでも差し出すんだろうけど…

見ず知らずのヤツから渡されたら引くよな。

出しかけたハンカチをポケットの中に突っ込むと、スクリーンに集中しようとした。

エンドロールが流れて、劇場が明るくなっても隣の人は涙が押さえられないようで。

無意識のうちに、しまいこんだハンカチを渡していた。

「良かったら使ってください。」

照れ臭くて彼女の顔が見れなかった。

「…すみ、ません。
ありがとうございます?」

彼女の語尾が上がったのを不審に思って、彼女に視線を合わせる。と、

「カオリ…ちゃん?」

「…びっくりした。」

あまりの事の成り行きに俺たちはしばし無言で見つめあった。

「全然気が付かなかった。」

やっとのことでそれだけ言うと、なんだか笑えてきて。

カオリも驚きを通り越して笑顔が顔に浮かんでいた。

「とりあえず、外出よっか?」

そうだな、と俺が頷いて劇場の外に出た。

「しかし2時間も隣にいたのに気付かないなんてね」

と笑うカオリ。
平日とはいえ、見終った客で混雑したフロアを移動しながら、俺は切り出す。

「実は涙もろい?」


「…いつも泣いてるわけじゃないよ?」

恥ずかしいとこ見られちゃったな…

とうつ向くカオリ。

普段のクールな印象からは想像がつかない、カオリの振るまいに俺は少し動揺した。

「よく一人で来るの?」

「たまに来る、かな。」

カオリちゃんは?と聞くと、カオリでいいと言われた。

「あたしも、たまにかな。
ムショウに観たくなるときがあるんだよね。」

…分かる気がする。

「あたし、何かおかしいこと言った?」

一人でにやけていたらカオリに不審がられて。

「いや、やっぱり似てるのかなと思って。」

クエスチョンマークが消えないカオリに、直樹に言われたことを話す。

「ふーん。」

少し不満そうなカオリに思わず質問が口から出る。

「カオリはどう思う?」

「あたしは、明くんに」

「明でいいよ。」

「…明に会った時から思ってたよ。」

あたしとおんなじニオイがするって。
言ってからシマッタ、という顔をするカオリ。

「ニオイって何だよ。」

その場に流れる嫌な空気を断ち切ろうと、軽く笑い飛ばす。

カオリもそのことについて触れたくなかったのか、俺に合わせてくれて。

「今日はバイト休み?」

「今日は夕方からラストまでなの。」

「マジか、大変だな。」

なんとか当たり障りのない会話で場を繋ぎ、それじゃ。と言って別れた。


─あ、

「カオリ!」

立ち去りかけたカオリが振り返る。

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