nao 49
そういえばカオリのこと良くしらないし。
どんなヤツなんだろ…
「カオリって付き合ってヤツとかいんの?」
「いや、…」
うつ向くアイツに、聞いてはいけないことだったな、と思う。
「言えないことは言わなくていいぞ?」
「…今は付き合ってないと思う。」
最近話してないから分かんないけど。
歯切れの悪い口ぶりに気付かないフリをする。
好きな人とかいんのかな。
直樹もそうだけど、そうゆう雰囲気を汲み取るのはニガテで。
直接聞くのも手だけど、聞き返されたら困るしな…。
直樹が帰った後もそんなことをずっと考えていた。
─どうしてあんな目をしてたの?
カオリの声が頭の中で響く。
切長の目を少し細めて俺を見つめる。
その目の奥にあるカオリの真意が分からなくて。
興味本意?
…違うな。そんな感じじゃなかった。
酔った勢い?
…あれはシラフだったよな。
何かを俺に期待してるような。
でも何を?
…
駄目だ!分かんねぇ。
大体自分の気持ちだって本当に分かってんのか微妙なのに、他のヤツが何考えてるかなんて分かるはずねぇじゃん。
頭を切り替えると、気分転換に映画を見に行くことにした。
最近CMで宣伝しているのを目にして、気になっていた映画があるのだ。
携帯で調べると1時間後に始まる回のがあって。
早速チケットを予約すると出かける用意をする。
昨日のアルコールはもう消えたようだけど、いつもより念入りに歯磨きをした。
戸締まりをして外に出ると、今日は晴れていた。
傘を持たずに出かける。
平日と言うこともあって、館内はあまり混んでいなくて。
予約しておいた席に着くと、ラッキーなことに左右は誰も座っていなかった。
別に隣に人が居てもいいんだけど、やっぱりいない方が映画に集中できる気がするんだ。
場内が暗くなり、予告編が始まったところで途中から入って来た人がいるらしく。
すみません…と周りに声をかけながら俺の左隣に座った。
声の感じから女の人だと分かった俺は、あまり注意を払わないようにしていた。
本編が始まると、話に引き込まれていった俺は、映画が終りに近付くまで隣の人のことは頭から消えていた…
話の内容は、昔起きた実際の事件の犯人が女子高生だった、というもので、予告編から大方の話の流れは掴めていた。
しかし主演の女優の眼差しが真っ直ぐで。
この映画を観に来て良かったな…と思えるものだった。
ワンシーンづつ彼女が見せる表情に引き付けられて。
笑った時の口元が少し朋子に似てるかな、と思った。
終盤に差し掛かったところで、隣の彼女は泣いているようで。