nao 42
「大丈夫?」
「お前こそ大丈夫かよ。」
笑いながらそういうと、頭がズキッと痛んで笑顔が歪む。
「水とか、適当に飲んでいいから。」
アリサも動けないのか、力なくそう言うと布団に突っ伏す。
俺は何とか体を持ち上げると、台所まで向かう。
冷蔵庫を開けると、アイツが好きなあのお茶と目が合って。
少しためらってから手に取る。
グラスに入れて一口飲むと、アリサにも持って行く。
「ほら、」
「…ありがとう。」
「アキラ、イイヤツだよね。」
寝惚けた頭をかきあげながらアリサはそう呟くと、
「応援するから。」
と俺を見て笑ってくれた。
化粧がとれていつもより幼く見えるアリサ。
なのに何でだか俺は、その時のアリサの笑顔が一番好きだな、と思ったんだ。
結局昼近くまでアリサの家でグダクダ過ごしてしまった。
アリサに礼を言ってアパートの外に出ると、外はウンザリするくらい良い天気だった。
日陰を選びながらやっと家にたどり着くと、シャワーを浴びる気力もなくて、まだ残しておいたコタツに潜り込む。
アイツの匂いが染み込んでいるコタツの布団を被るとアイツのことしか考えられなくなって。
せめて夢の中ではアイツに触れてみたいのに、それさえも叶わなくて。
昨日から涙腺が緩くなっているのか、目が覚めると枕元が濡れていた。
──────────
最近明が変。
前は、見ていて気持ちよくなるくらい良い笑顔で笑うヤツだったのに、今は塞ぎこんでいることの方が多くて。
高校の時を思い出させるような明の横顔に、あたしは危険を感じていた。
またあの時みたいになっちゃったらどうしよう…
あんな明、もう見たくないよ。
ねぇ、本当に大丈夫なの…?
振り向いてくれない人なんてやめちゃいなよ。
あたしがいるじゃん。
ねぇ、明─
最近俺は図書館に入り浸ることが多くて。
昔から俺は本が好きで。
地元の図書館に知らないタイトルの本なんて無いくらいだった。
図書館に来ると、何故だか懐かしくて…気分が落ち着くんだ。
たまにアリサや朋子、それに直樹から連絡が来たが、教採の試験があるからと、なるべく誰にも会わないようにしていた。
始めこそいぶかしがっていたが、俺のやる気が伝わるとみんな納得してくれたようだった。
学校の近くの市立図書館は、有名なデザイナーが設計したらしく。
照明や机、椅子にもそのこだわりが見て取れる。