nao 38
─雨に濡れるのは嫌いじゃないよ?
─雨の中、自転車漕いだりしちゃうもん。
そんなんだからすぐ風邪引くんだぞ?
─いいの、好きなんだから。…でも、気を付けます。
やけに素直じゃん。珍しいな?
─だって明のゆうことは、いつも正しいからさ。たまには言うこと聞いてあげる。
笑ってる時が一番幸せだった。
笑ってるときが一番可愛かったぞ?
ビショ濡れになってようやく家までたどり着くと、濡れたものを洗濯機につっこんでロフトに上る。
風邪、引くかもな。
俺の意識があるのはそこまでで。
携帯が何度か鳴ったが取る気力が湧かなかった。
何度目の着信だろう。
ボヤけた頭で考えていると、玄関が開く音がした。
鍵かけ忘れてたか…
何か言いながら誰かが上がってくる。
「明?!」
ちょっとどうゆうこと?
顔真っ赤じゃない!
「…アリサ…か?」
「アリサか?じゃないわよ!アンタ馬鹿じゃないの!?!」
俺の熱がひいたのは、それから3日後の朝だった。
後から聞いたところによると、LUCEにはトモコの他にカオリやアリサまで来ていたらしく。
連絡が取れない俺を不審がって、家を知っているアリサがわざわざ訪ねてきてくれたらしい。
結局ただの風邪だったんだが、医者に行けなかったため、3日も寝込む羽目になったようだった。
3日の間、俺の家には耐えず誰かが見舞いに来てくれていたらしく、果物やらレトルトのお粥やら薬やらを置いて行ってくれた。
そのおかげで、俺は食べるものにも困らず、普段より良い暮らしが出来ていた。
ただ一つを除いては…
「…なぁ、お前いつまでここいる気?」
「ふーん、命の恩人にそんな態度でいいわけ?」
「…ごめんなさい。」
アリサは付きっきりで俺の看病をしてくれたらしくて。
当分コイツには頭が上がんないな…
もう大丈夫だから、って言ってもアリサは心配らしく。
口に出しては言わないけど、あの時のことがアリサにも忘れられないんだと思う。
お前のせいじゃないって何回も話し合ったけど、やっぱりまだひきずってるんだな。
「本当にもう大丈夫だから。」
なんかあったら今度はちゃんと連絡するしさ、と言うと、やっとアリサは納得してくれて。
「絶対無理しちゃ駄目だからね?」
と言って帰って行った。