nao 33
その内きっと気付くだろう
自分の愚かさに
本当にアイツと友達なのか、とな
その日の朝の寝覚めは最悪だった。
もう一人の俺が、好き勝手喋って終わるというもので。
その日一日、俺はイライラしていた。
こんな日は嫌な事が起こるもので。
久しぶりにアリサに捕まった。
「ちょっとアキラどうゆうこと?!?」
「何が、どうゆうことなのか教えてくんなきゃ答えらんねぇよ。」
「だから!どうして教えてくれないのよ?」
「直樹くんがバイト始めたって…」
「あれ、アイツ今日からだっけ?」
最後の方は元気を無くしたのか小さい声になったアリサに気付かないフリをして、興味がなさそうな声で言う。
「昨日からだったって。友達が直樹にコーヒー入れてもらったって言うからビックリして…」
知ってたらあたしが一番目のお客さんになりたかったのに。
とうつ向くアリサがいつになく可哀想に思えて。
「…じゃ今日行く?」
と誘ってしまった。
「いいの?」
顔を上げるともう満面の笑みを浮かべるアリサに、俺は次こそはコイツの顔には騙されない!と心に誓った。
電車に乗りながら、これからアリサが目にするであろう光景を思い浮かべる。
─「なおきく〜ん、これ運んでくれる?」
「はい、分かりました」
働く直樹。
「やっぱり若い男の子がいると違うわね〜」
そこまで考えて、俺はあそこのバイト先には若い子しかいなかったことを思い出した。
それじゃ、こんな感じかな…
─「直樹、これお願い。」
「あ、うん。」
重いものを運ばされる直樹。
「やっぱり男の人がいてくれると助かるな。…ね、今日バイト終わったら空いてる…?」
うん、こんな感じかな…
自分で想像していて、あまりのくだらなさに笑ってしまう。
「アキラ、笑ってないで次降りる駅だってよ?」
アリサに服を掴まれて我に返った俺は、慌てて座席から立ち上がる。
「何よ、さっきからニヤニヤしちゃって。」
そんなに向かいのお姉さんが可愛かったわけ?
と聞いてくるアリサの不機嫌そうな声で、俺は顔が弛んでいたことに気付いた。
「見てなかったや…見とけば良かったな。」
そんなに可愛かった?と逆にアリサに聞くと、別にそうでもなかったらしい。
コイツが末っ子だったって忘れてた。