nao 32
思わずそう聞いたら、バイトが一緒で仲良くなったの。とトモコに言われた。
「…もしかして、こないだ店にいた?」
やっと気付いた?、と言わんばかりにカオリは頷く。
あぁ!それでか。
やっと俺は全てを理解した。
「世間は狭いんだなぁ。」
思わずそう呟くと、他の三人も同意してくれて。
トモコとカオリはこれから買い物に出掛けるらしく、もう店を出ると言うので、俺と直樹も会計をすることにした。
早く家に帰ってゴチャゴチャの頭を整理したかった。
─何より、アイツがあの子を見つめる視線が痛かった。
…俺も好きなんだけどな。
俺とアイツとの距離15cm。
近いようで永遠に縮まることのないこの距離。
トモコならいとも簡単に越えて行けるんだろうな。
どんなに俺が想っても、俺はトモコに勝てない。
手を伸ばせば触れられるのに。
誰より近くにいるはずなのに、届かない。
なんで俺、こんなに苦しいはずなのに笑ってられるんだろ…
アイツが笑うたび心臓はバカみたいに早くなって、アイツと目が合たびに、自分を押さえ付けるので精一杯なのに。
触れたくて大事にしたくて、時々壊したくなる。
その笑顔をぐちゃぐちゃにしてやりたいって。
本当、おかしいよ。
俺どうしたらいいんだ?
─手に入らないなら壊してしまえ
嫌だ!
─お前のものにはならないんだから
…
駄目だよ。
─どうして?好きなようにすればいい
お前の想像通りに
したいように
駄目だ!
アイツは大事な、
─…大事な?
大事な、友達だから。
─友達、か
友達だよ。俺の大事な友達だ。
─まぁ精々頑張ればいいさ