nao 31
先に我慢できなくなったのは、やっばりアイツの方だった。
「明はさ、朋子ちゃんと知り合いだった?」
そりゃ自分の気になっている子が友達と仲良かったら焦るよな。
「ん、前にカズヤから紹介してもらって2、3回遊んだだけだよ。」
知り合いっていや知り合いだな。と俺が説明しても、アイツはまだ不安そうな顔をしていて。
「直樹は?」
と聞くと、
「朋子ちゃん、サークルの友達の友達でさ。
それで俺、今……カオリ?」
かおり?
アイツの声に反応して振り向くと、女の子が立っていた。
俺があの時からずっと探してた、あの子が。
カオリと呼ばれた女の子は俺には気付いていないみたいで、直樹とサークルの話で盛り上がっていた。
いつ声をかけようか迷っていたら、向こうはやっと俺の存在に気付いてくれたようだ。
「あ、明ごめん。カオリのこと前話したことなかったっけ?」
俺は覚えてないという意味を込めて首を横に振る。
「でも、初めましてじゃないよね?」
俺がそう言うとカオリは頷いてくれて。
「今度はちゃんと覚えててくれたんだ。」
と、俺が記憶していたよりも低い声でそう言った。
直樹は俺たちの会話についてこれなくなったみたいで。
えっ、二人知り合い?
と俺たちの顔を見比べていた。
驚いていたのは俺も同じだったけど、納得できることの方が多かった。
─あの日、俺の家に来る前にアイツは指輪を失くしていたんだ。
サークルの飲み会で指輪を見つけたカオリが、俺に渡してくれたんだろう。
あれ?でもなんで俺がアイツの友達だって分かったんだろう。
「カオリ。」
3人で声のした方を向く、とトモコが立っていて。
トモコと友達?
「あたしはナオキとトモコの両方からアキラくんのこと聞いてて、けっこう前から知ってたんだ。」
─と、ずっと黙っていたカオリが口を開いた。
「なのにアキラくん、まったく気付いてくれないし…
後から思えば当たり前なんだけどさ。」
でもちょっとショックだったな、とうつ向くカオリ。
「…あ、態度悪くてごめん。」
カオリの言葉であの時の光景が蘇り、慌てて俺は謝る。
「あの時、本当に怖かったよ?」
思わず逃げてきちゃったもん。と笑うカオリ。
俺はあまりの気まずさに、早くここから逃げ出したくてたまらなかった。
直樹とトモコはなんのことだかサッパリ分かっていないようで。
二人供、どうゆうこと??という顔を俺とカオリに向かってしていた。
「とりあえず、ここ出ないか?」
という俺の提案に3人が頷いたので、それぞれが会計を済ませて外に出る。
学校の近くにある小さい公園の木のベンチに、机を挟んで俺たちは座る。
俺の隣に直樹、向かいにカオリ、そして斜め向かいの席にトモコが腰を下ろした。