nao 30
「…なぁ直樹、」
ここに誰と来たかったんだ?
そう言おうとした時だった。
「アキラくん?」
俺は振り返りたくなかったけど、振り向かざるをえなかった。
「朋子ちゃん。」
嬉しそうにトモコの名前を呼ぶ直樹。
「ナオキくんも来てたんだ。二人?」
そうなんだ。と頷く直樹。嬉しいオーラ出すぎだぞ、お前…
「良かったら、一緒にどう? 」
何言ってんだ俺。
断ってくれ、トモコ…
え、いいの?と言ってからトモコは少し困ったようで。
どうやら連れがいるみたいだった。
「うーん、嬉しいんだけど今日は友達と来てて。」
また今度誘ってね。と言いながらトモコは俺たちとは反対側の席に向かって行った。
なんとなくホッとしながらその後ろ姿を眺めていると、トモコの友達に見覚えがある気がした。
ふと視線を感じて、テーブルの向かいに体を戻すと、直樹が驚いた顔をしていて。
「、どした?」
「や、別に何でも…。」
なんだぁ?
…あ、直樹は知らないのか。俺とトモコが知り合いだったってこと。
でも聞かれるまで黙っててやろ、と俺は心の中で舌を出していた。
ちょっとはヤキモキさせてやんないとな。
いつも俺ばっかり振り回されてんのもシャクだし。
─アイツが考えるのはトモコのことなんだろうけど。
え、じゃ俺ってアイツの中でライバルとか思われてたりして?
おいおい…
何が悲しくて好きなヤツの恋敵になんなきゃいけないんだよ。
─かといって仲を取り持つ気にもなれないしな。
ゴチャゴチャと考えていたら料理が来て。
俺が考えている間、アイツもいろいろ考えてたみたいで。
そんなアイツを見てたら、なんだか応援したい気持ちが湧いて来て。
目の前のカルボナーラを胃の中に収めながら、これからの事を想っていた。