nao 28
どうしてこの笑顔の先には俺がいないんだろう。
本当の俺はそんなことを考えているのに、もう一人の俺はアイツと楽しそうに話をしていて。
バイトが決まったら遊びに行くと約束までしていた。
アイツが嬉しそうにその子の事を話す度、俺の胸はズキズキ痛むのに。
「…そう言えば、見付かったぞ?」
ほら、と棚の上に置いておいた指輪を渡す。
その時のアイツの顔を、俺はきっとずっと忘れないと思う。
そのくらい嬉しそうな顔でアイツは俺に笑いかけてくれたんだ。
ひとしきりハシャイだ後で、何処にあったか聞かれたけど、なんとなく本当の事は言えなくて。
コタツの中にあった、と言っておいた。
─あの子は誰だったんだろう。
俺の知ってるヤツじゃなかった。
アリサに聞いてみようかな。アリサ女には顔広いみたいだし。
直樹はあの子のこと知ってんのかな。
分っかんねー…
考えれば考えるほど頭の中がゴチャゴチャになってきて。
せっかく久しぶりに直樹に会えたのに、それを楽しむ余裕もなかった。
「明はさ、最近どうなの?」
明はあんまり自分のこと話してくれないからなぁ。俺じゃ信用ならない?
そう言ったアイツの少し寂しそうな顔を見ると、罪悪感でいっぱいになる。けど…
ごめん。これだけは言えねぇよ……
─お前の事が好きだなんて。
「出会い、無いからなぁ。」
それに俺モテないしさ…と何時かの直樹を真似して言ったら、
「そっかなぁ…明かっこいいと思うけど。」
へっ?
不意打ちをくらって赤くなった顔を見られないように、思わず顔を背ける。
アイツは急に喋んなくなった俺を不審に思ったみたいで。
「明?」
お前下から覗きこむのは反則だろ?