nao 26
頭から布団を被る。
さっきまで浮かれていたのが嘘のようだった。
その日見た夢はもう散々で。嫌な汗をかいて起き出した時には、どんな夢だったか忘れていたのが、唯一救いだった。
ロフトから降りてカーテンを開けると外はまだ薄暗くて。
いい汗がかきたくて走りに行く準備をする。
外に出て鍵をかけると、道路には昨日の水溜まりがまだあって。
今日はそれを避けずに走る。
スボンの裾がドロドロになっていったけど、そんなのどうでも良くて。
でもどんなに走っても、あの嫌な気分は拭えなかった。
どんどんスピードをあげる。
振り切っても振り切ってもあの感じがついてきて。
朝焼けで街に色がつき始めた頃になっても、気持ち悪さは拭えなかった。
「…ここ、どこだっけ」
背中に流れる汗を感じる。
どのくらい走っていたのかも分からない。
このままずっと走っていたい気もした。
「でも帰んなきゃ。」
大学は午後からだけどその前に洗濯しないと。
ゆっくりとスピードを落とす。
来たことがない場所だった。
出勤途中のサラリーマンについて歩いていくと、着いた駅は普段乗る駅の3っつ先の駅で。
けっこう走ったつもりでも、あんまり遠くに来ていなかったことに少しガッカリしながら、ジャージに入れっぱなしだった小銭で切符を買う。
まだ通勤ラッシュには早い時間だったようで、電車の中はそんなに混んでいなくて。
なんとなく先頭まで歩いて行くと、席も空いていた。