nao 16
昔少しだけ遊びに行ったことがある仲だ。
最後にあったのは4月の終わり頃、のはずだからもう1ヶ月ちょいは会っていない計算になる。
「あー、元気してた?」
とりあえず当たり障りのない言葉を返したが、カズヤはそれだけじゃ満足しなかったみたいで。
「アキラさぁ、…なにが不満だったわけ?」
うっ…。
「トモコ可愛いし、性格もそこそこいいし。しかもお前のこと気に入ってるみたいだったぞ?」
まさかアイツが好きだから悪くて会いずらくなった、なんて言えないだろ。
「あー、なんか今俺忙しくてさ。真面目に考える余裕がないんだよね。」
これも本当だ。俺は今、アイツのことでいっぱいで。他のヤツのことなんて考えられないんだから。
「そっか。」
俺はいいんだけど、アキナがうるさくてさ。
カズヤは切長の目を細めて、困ったように笑った。
秋奈はカズヤの彼女で、トモコの友達。
それも高校からの親友らしい。
そりゃ心配するよな……。
「悪いな、せっかく紹介してくれたのに…」
俺がしおらしくそう言うと、気にすんなって。と肩を叩いてくれた。
カズヤも大学に入ってからの友達だが、本当に良い奴で。
2年の終わり頃から付き合っているアキナとは、二人とも長身のせいか、傍から見てもお似合いだと思う。
最近は、アキナの尻に敷かれているようだが…
「じゃ、またな」
そう言って別れる。
地下鉄なんて乗るの、久しぶりだな。
昔はよく乗ってったけど。
─ あきら早く!電車行っちゃう!
そんなに急がなくても大丈夫だって。
─ だって急がないと先頭の席取れないじゃない?
お前ガキじゃないんだから…別に先頭じゃなくても良くないか?
─ えぇーっ、先頭じゃなきゃ駄目だよ。
どうして?
─ だってね、………だから。だから早く行こ?
あれ、何でだっけ?