nao 15
雨、か。
─雨、好きだよ。
なんで?
─雨ってさ、誰かの代わりに泣いてると思うんだよね。
─今日はあたしの代わりに泣いてくれてる。
俺は嫌いだ。誰ともなしに、俺はそう呟く。
久しぶりに思い出したな…
元気にしてっかな。
よし!今日は見たかった映画を観る日にしよう。
思い立ったらすぐ行動に移さなきゃ気が済まない俺は、さっそく出かける用意をする。
携帯のネットから映画のチケットを予約すると、最近気に入っているブルーデニムのジャケットを着る。
財布と携帯だけ持って家を出た。
一番近くの映画館まで、地下鉄で15分くらい。
確か今日はメンズデーだったはずだ。
家に鍵をかけて傘を開いたところで携帯が鳴った。
映画館に着く前には電源切っとかなきゃだな。と思いながら電話に出る。
「だれ〜?」
「俺。って電話取る前に確認しない?」
「…あぁ、どしたよ?」
できれば、今はあんまり声聞きたくなかったんだけど…。
「俺、こないだ明の家に指輪忘れてかなかった?」
直樹はそんな俺の様子に気付くこともない。
「どーだろ。気付かなかったけど…」
「そっか。じゃ、もしあったらメールしてくれる?」
「分かった。んじゃまたな。」
「うん、じゃまた。」
もうアイツと繋がっていない電話をみつめる。
携帯って便利だけど、たまに壊してやりたくなる。
無けりゃ無いで生活していけそうなのにな…。
余程俺はボーッとしてたみたいで。地下鉄の駅で友達に肩を叩かれるまで、ソイツの存在にまったく気付かなかった。
「やっぱりアキラじゃん。」
「おぉっ、カズヤ。いつぶり?久しぶりだよな。」
「お前声かけてんのにシカトすんだもん。
ドッペルゲンガーかと思ったし。」
そう笑いながら言うソイツ、カズヤは一緒のグループの友達の一人だ。
「わり、ちょっと考え事しててさ」
アキラってしっかりしてそうに見えんのに、変なとこ抜けてんよなぁ…と、少し呆れながら言うカズヤに、俺は苦笑いしかできなかった。
「そいやさ、俺こないだトモコに会ったんだわ。」
トモコ、近野朋子はカズヤの彼女の友達で。