nao 14
─すきなんだ
だから…俺じゃないだろ?
─あきらのことが
「いい加減にしろよ!」
自分で怒鳴っておいて、自分の声のデカさにビクッとする。
何やってんだろ…俺。
玄関に座り込んでうずくまる。
これじゃこないだのアイツみたいだ。
そう思って笑みが溢れる。
アイツ…上手くいくといいな。
そう呟いて俺は立ち上がった。
アイツじゃないけど、こんなとこで寝たら風邪引くしな。
熱いシャワーを浴びてロフトに上る。
布団にくるまって、早く朝が来ることを祈った。
布団にもアイツの匂いがついていて、それにくるまれるように俺は眠りについた…。
─────
久しぶりに夢を見ないで起きた。
今日は授業が午後からなので、布団でも干そうかと思いながら起き出す。
ザー…
ん?なんだこの音?
首を捻りながらカーテンを開けにロフトを下りると、俺はその音の正体を知った。
そういや今日から6月だっけな…
寝惚けた頭でそんなことを考える。
外は大雨だった。
ったく台風でもあるまいし…
これじゃ布団どころか洗濯物も干せねぇじゃん。
乾燥機まで行かなきゃだな。
俺が住んでるのはいわゆる学生街で。コインランドリーはもちろん、少し歩けば銭湯もある。
まだ俺がアイツのことをただの友達だと思ってたころは、友達みんなでよく銭湯に行った。
一人暮らしじゃなかなか入れないデカイ風呂に、俺達は大ハシャギだった。
何か特別なことがあったわけでもないのに、なんか楽しかったんだよな。
毎日くだんないことで笑ってた。
この時が永遠に続く気がしてた。
それが段々つるむ奴らが減ってきて。
今では直樹と俺と、あと2、3人かな。仲良いのは。