nao 13
何しろ次の授業の教授は時間に煩いんだ。
こないだなんて3分遅れただけで教室から追い出されたもんな。
あー、本当ヤバイ!
──────
なんとか間に合って、無事今日の授業を終えることができた。
時間もあるし、今日は家でゆっくり飯でも作るかな。
今日の献立を考えながら近くのスーパーへと向かっていたら、アイツを見付けた。
最近めっきり視力が落ちてきている俺だが、アイツだけは間違わない自信がある。
直樹!
そう声をかけようとした時、俺はアイツが一人じゃないことに気付いた。
隣に誰か、いる。
知ってるやつ?…じゃない。
知らないヤツの方が、いいかもな。
もしアリサと付き合うことにでもなったら、(おそらくないけど…)二人+俺で遊びに行こうとか言われかねないもんな。
さすが、直樹のお眼鏡にかなうだけあって、可愛い子だ。
背なんて低くて、色白で、華奢で。
当たり前だけど女で…。
スーパーに行くのは止めにして、アリサに電話をする。
「もしもし?あー…俺。
…
うん。今日ヒマ?
…
飲みに行かないか?
…
うん…じゃあ。7時に。」
今日は独りではいれそうになかった。
─アリサの良いとこは、何も聞かないところだ。
たわいもない話をして、一緒にとことん飲んでくれる。
たまに、コイツにならアイツのこと話してみよいかな。って気になるくらいだ。
コイツがアイツに惚れてなかったら、俺はきっと言っていたと思う。
「ねー、アキラはさ、卒業したら実家帰んの?」
アリサがそう切り出してきたのは、二件目の居酒屋でだった。
「んー…結果次第だな。」
俺は就活の他に教職も密かに狙っていて。
色んな県のを受けようと思っていた。
「アリサは?」
「んーあたしは、まだ迷ってる。」
コイツは酔うと語尾を伸ばす癖があって。
それが出てくるともう黄信号だ。
「ねー、直樹くんはさぁ?やっぱり地元で就職?」
「ん、たぶんな。」
「そっかー…。」
「アイツ、今日…」
女といたぞ?と、教えてやるべきどうかかで迷った。
「なによー?」
「今日、オニギリ作ってくれたぞ?」
「えー!なんでアキラになのー。おいしかった?」
「ま、普通だな。」
砂糖がついていたことは言わないでおこう。
その後、さんざんアリサに絡まれ、店も閉まるようだから、アリサを家まで送ってから俺は自分の家に帰ってきた。
玄関のドアを開けると、わずかにアイツのつけてる香水の匂いがした。
昨日のことが頭の中を廻って。
夢の中のアイツが出てきた。
おいおい、相手間違ってんぞ?
直樹はおっちょこちょいだからな…