nao 11
「なぁ、直樹?」
「ん、どした?」
「…歯に海苔付いてるぞ?」
「マジ?ちょっと俺トイレ行って来るわ。」
行った…か?
直樹の姿が見えなくなったのを確認すると、俺はお茶で口の中のものを流し込んだ。
どうやらアイツは、塩と砂糖を間違えたらしく。
ま、色も形も似てるし、しょうがないよな?
俺は誰にともなくそう呟くと、残りのオニギリを口に詰め込んだ。
俺も結構ハマッてんなぁ…
あ、直樹だ。探してる探してる。
俺らが通ってる大学は、飯時になるとすごく混む。
だから一回席を離れると、アイツはどこに俺がいるのか分からなくなるみたいで。
俺はそんなアイツを見ているのが面白かった。
いつ俺のことに気付くか、ニヤニヤしながら見てると、アイツは他の知り合いを見付けたらしい。
楽しそうに話し込んでいるアイツを見ていたら、ふと昨日のことを思い出した。
「気になるヤツができたかも。」
確かにアイツ、昨日俺にそう言ったよな?
昨日酔ってたし…
俺の聞き間違いかもしれないよな。
でも気になる………。
はぁ。
「溜め息つくと幸せ逃げるらしいよ?」
「いーんだよ。俺はもう十分幸せもんだから。」
無事(?)帰ってきたアイツと軽口を言い合う。