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アンダンテ
恋愛リレー小説 - 年下

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アンダンテ 1

いつもと同じ朝の景色。たいしてかわることが無い毎日。変化があるとしたら天気くらいだ。
俺は生まれつき心臓が悪い。医者が言うには二十歳までもつかわからないそうだ。まぁ運が無いとしか言いようがない。
小さい頃から学校にはあまり通っていない。いつ発作が起こるかわからないからだ。
毎朝起きて一番に思うことは−まだ生きていた−

「おはよう」
リビングに行くと父さんと母さんが朝食をとっていた。
「恒ちゃんおはよう!体調はどう?」
母さんはいつものようにまずは俺の体調を聞いてくる。
「いつも通りだよ。心配しないで。」
そう言って微笑んでも、母さんが心配しない日なんて無いことは知っている。
「恒星。今日は天気が良いから少し外に出てみたらどうだ?」
父さんがコーヒーに口を付けながら聞いてきた。言われて外を見ると、空には雲一つ無いくらいの澄んだ青空が広がっている。
「…そうだね。」
父さんは、過保護すぎるほど俺を心配する周りの人たちと違い、唯一俺を普通に生活させてくれようとする人だ。だが、普段は仕事が忙しいためめったに会えない。
俺の家は、ひい爺さんが建てた貿易会社を筆頭に様々なビジネスをしている。いわゆる金持ちだ。

朝食を済ませて散歩にでも行こうかなと、上着を着ていると母さんが心配そうに、
「一人で行くの?誰か連れていったらどう?」
と言ってきたが、すぐもどるからと断り外へ出た。

久しぶりの外はとても気持ち良かった。晴れてはいたが、夏のように目を刺す日差しではないく心地よい。風はなくぽかぽか陽気といった感じだ。
俺は近くの川原まで行ってみた。
この時間なら人がいることはまず無い。別に人に会うのが嫌だとかいう訳ではないが、何となくそこでは一人でいたかった。

川原に着くと俺は土手に寝転んだ。
あぁ。本当いい天気だなぁ。
秋晴れってやつかな…。
俺はぼんやり空を眺めながら物思いにふけっていた。

♪〜♪〜〜♪〜

なんだ?鼻歌?
人いたのか?
上半身を起こして辺りを見回すと、俺より少し斜め上に女の人が座っていた。
鼻歌を歌っていたのはこの人だった。
泣いていた。
静かに泣いていた。


彼女は自分でも泣いてることに気が付いていないんじゃないか、と思うくらいだった。
空を見上げたままで鼻歌を歌いながら、時々鼻をすすり、まるで魂が抜けたかのように膝を抱え座っている。

いつもなら人が来るとすぐにその場を離れてしまう恒星だったが、何故か今日はそんな気にはなれなかった。

「…あの…。大丈夫ですか?」

「………。」
彼女は静かに恒星を見た。
その彼女の瞳はとても綺麗で恒星が今まで出会った中でこんな瞳をしている人はいなかった。


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