〜再会〜 55
薊はまた口を開く。
「傾いた会社も親父がなんとかし、いざ日本に帰れるとなった時、亜莉朱の問題が現れた」
日本に連れてくか
おいてくか
「心配だった亜莉朱の様子も、親父が会社を立て直している間に正常になったが、慣れた所と離れる事でまた精神不安定になると考慮し残す事にしたんだ」
心配要素はまだあった。日本に来れば恋歌に会う、気付くだろう薊の気持ち、親と兄を説得し、残して来た意味が、無くなってしまう。
残される亜莉朱の気持ちを分かってながら、敢えて残した。
理由は一つ、邪魔しないで欲しかった。
「もう一度言う」
薊の冷たい手のひらが恋歌の頬へと触れた。
愛しそうに何度も頬を撫でる薊の手を、恋歌は思わず握る。
冷たい、温もり。
「俺は亜莉朱を好きになれなかった。女として見る事も出来ないのに、約束だけが先走った」
恋歌の手が、震える。
薊の懐かしい瞳が、泣きそうな恋歌を映した。
「小さい頃から一人だけだった。」
思い通りにいかないのも、好きすぎて泣きそうになるのも、抱き締めたいと願う人も、ただ一人。
「恋歌、お前だけが好きなんだ。」
恋歌の瞳から一筋、涙が零れた。
何の涙なんだろ…。
流れた涙が頬に一筋、後を残す。
恋歌自身涙が零れ落ちる事は想定外だったろう、その後を薊が拭う。
突き放された事のあるあの手が、優しさに満ちていた。
「あたしを、好き。」
問い掛けるように、はたまた自分に言い聞かせるように呟く。
薊の微笑みが、肯定を意味し、その意味に気付いた恋歌はまた、涙を零した。
「あたし…」
声が思うようにだせない、ああ、これが緊張なんだろう。
何の涙なんだろ…。
流れた涙が頬に一筋、後を残す。
恋歌自身涙が零れ落ちる事は想定外だったろう、その後を薊が拭う。
突き放された事のあるあの手が、優しさに満ちていた。
「あたしを、好き。」
問い掛けるように、はたまた自分に言い聞かせるように呟く。
薊の微笑みが、肯定を意味し、その意味に気付いた恋歌はまた、涙を零した。
「あたし…」
声が思うようにだせない、ああ、これが緊張なんだろう。
早鐘のような胸を押さえて深呼吸をひとつ。
やっと、伝えられるんだ。
押さえ込んでた気持ち。