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〜再会〜
恋愛リレー小説 - 初恋

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〜再会〜 2

「こら、薊!久しぶりに会ったのにそんな言い方したら、恋歌ちゃんに失礼だろ」
チッと舌打ちしながら訝しげに見上げる薊の頭をコツンと叩き、『久しぶり。益々可愛くなったね』と言い、恋歌を見下ろすその日の簓も、あの頃と何一つ変わらない最上級の笑顔を惜しみなく振り撒いて…その笑顔は、朝陽をいっぱい受けてキラキラ輝いていた。
 全く変わってなかった。
恋歌はしばし放心状態となった。
その心を現実に引き戻したのは…近くの小学校の・チャイム。
「あ!学校…!!」
 遅刻だ。 恋歌の顔が、青ざめていくのが分かった。
「ごめん、恋歌ちゃん。こいつの所為で。」
 ささらが、すまなそうに眉間に皺を寄せ薊の頭を無理やり下げさせる。
「いてぇよ!兄貴。」
 薊が反抗の態度を見せるが、僅かな力はささらの前では無に等しかった。
「あ、ううん。兄ちゃんの所為じゃないから…もぅいくね。」
「また、よろしくね。」
 『また』…やはり、少年等はあの家に越して来たのだ。 恋歌は少し笑顔になり、複雑な表情をしてみせた。
 涼やかな笑顔でハラハラと手を振って、恋歌とは逆方向へと向かう簓を、夢見心地で手を振り見送った恋歌。
 しかし、彼が角を曲がり、見えなくなると、ふっ短く溜息をつき、眉間に皺を寄せて、腰に手をやり仁王立ちになった。
「―で?あんたは何でここに残るの!?」
 恋歌は自分の真横をジロリと睨む。
 そこには、満面の笑顔を浮かべて、恋歌と一緒に遠ざかる簓に向かって、手を振っている薊がいた。
「何でって…コ・レ♪」
 薊が自分の胸元を指差した。
 ゆっくり視線を落した恋歌は、心肺停止状態に陥った。
「!!…うそ…でしょう?……」
 そこには…紛れもなく、自分の胸元に付いている学章と同じものがついていた。
 恋歌は、大きな瞳を更に見開いて、『恋歌、学校どっちだ?』と何事もなかったように問い掛けてくる薊を愕然と見上げた。

「転入してきた、春日谷 薊です。よろしくお願いします。」
 短い文で自己紹介し、薊ににこやかな笑みを見せる。
 口さえ悪いのを隠しておけば、そこらには居ないほどの美少年のできあがりだ。
「きれぇ〜。」
「セピア色だよ。」
 口々に褒め称える女子の中で一人。むす…。と頬を膨らませる恋歌がいた。
 まさか、同じクラスになるとは…。
肩をがっくり落とし、もう何もかもする気をなくした。
「恋歌。」
 関わりたくない。
そう思ってた矢先、教室中に響く声で薊に呼ばれたのだ。
 恋歌の身体が、悪魔の囁きにピクッと反応してしまう。
 ざわついてた教室が一瞬で静まり返り、クラスの視線が一気に蒼ざめた恋歌と、恋歌に駆け寄ってきて向かいの席の椅子を跨いで座り、長い脚を放り出して、頬杖をつき、得意の屈託の無い笑顔を大放出している薊に集中する。
「なぁ、なぁ、恋歌」
「…」
「なぁ、なぁ、なぁ」
「うるさぁ〜い!…なによ!」
 無視を決め込んでいた恋歌だったが、なぁ、なぁと連呼しながら詰め寄る薊に思わず叫んでしまう。
 再びクラス中の耳が新入りの美少年の発する言葉に聞き耳をたてる。
「なぁ、恋歌って彼氏いるの?」
「!?」

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