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仮面少年の恋
恋愛リレー小説 - 初恋

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仮面少年の恋 33

別に玉子焼きが食べたかったわけではない。優梨姉の作ってくれるものならなんでもいい、玉子焼きでもハンバーグでも、例え炊いた白米であったとしても。
重要なのは、優梨姉が僕のために作ってくれるということ。くだらない独占欲だ。
「おまたせ〜」
10分もしないうちにお盆をもった優梨姉が帰ってくる。お盆には、おかゆと玉子焼き…ほかほかしてる。起き上がるが、まだ少し熱があるのかぼんやりした感覚は抜けない。

「ベッドの上でご飯なんて贅沢の極みだ」
「ついでに食べさせてあげよっか?」
「うん、お願いしようかな」
「えっ」
「なにそのリアクション?」
「好太のリアクションこそ!なにいってんだよ、優梨姉〜っていうかと思った」
「熱で浮かされてるんのかも」
「そうみたいだね」
「でも、自分の言葉に責任もってよね」
「む〜、なんか強気だね」
「してくれるでしょ?」
「生意気」
「いたっ」
デコピンされた。
「やっぱり、ダメ?」
「………もう、仕方がないなぁ」
熱のせいかいつもなら出てこない言葉がするする紡がれる。いつもより素直な気がする。素直だし…なんだかんだで僕に甘い優梨姉に甘えている。
「はい、あ〜ん」
優梨姉がおかゆをすくい、口に近づけてくれる。
「んぐ…おいしい」
最高に贅沢だ。
「甘やかされてる」
「病人の特権よ」
「熱出てラッキー、なんてね」
「バカ」
呆れたように、でも、頬には微笑みを浮かべながら優梨姉が呟く。
「なんだか昔を思い出すなぁ」
「昔?」
「好太って邪引くと、甘えん坊になってたよね」
「そうだっけ?」
とぼけたふりをしたが、よく覚えている。
「ふふ、私、一人っ子だったから、弟が出来たみたいで嬉しかったよ」
ズキン…心の奥がぎゅっとしめつけられる。悪気がないのはわかっているけど、やっぱり、傷付く。
「優梨姉は…」
「ん?」
「優梨姉は彼氏いるの?」
「なに突然?」
頬を赤く染める。都合が悪いときは、顔を逸らすのは昔からのクセだったね。
「そう、なんだ」
「だから!突然どうし…っ!!」
悲しかった。
こんなに近くにいるのに男として意識してもらえないことが。
苦しかった。
他の男のことで頬を赤く染める優梨姉が。
憎かった。
優梨姉に好きになってもらえる男が。
悲しくて、苦しくて、憎くて………だから、我慢できなかったんだ。

僕は気が付いたら優梨姉の唇に自分の唇を重ねていた。



ーside優梨菜

 最近、幼なじみに再開した。
 その子は、少しだけ弱虫で泣き虫で、だけど、とっても優しい子だった。
 私のあとをいつもちょこちょこついてきて、とっても可愛かった。
 年を重ねるにつれて、段々と男の子から男性になっていって、私が中学にあがってからは、たまに近所であっても昔のように話すことはなくなっていった。
 そのことを寂しく思いながらも、私を見かけるとペコリと小さく頭を下げる姿にあの子らしさを感じ変わらないことを嬉しくも感じていた。
 高校に進学してからは、近所で会うこともあまりなくなって、自分の生活の中にあの子の存在は消えていた。
 あの子が高校に入ってくるまでは…。
 久しぶりに再開したあの子は、やっぱり弱虫で、とっても優しかった。私は変わらないことを喜び、変わらないことを望んだ。
でも、変わらないことを望んでいたのは私だけで、彼は変わろうとしていた。



「優梨菜」
 待ち合わせ時間ぴったり。彼は、いつもそうだ。早すぎることもないし、遅刻もしない。いつも時間通りに来る。好きな子と出掛けるときだって、それは変わらない。
「遅いよ」
 時計に目を向け、首をかしげる。
「時間、間違えたか?」
「私より後に来るなんて」
 大げさに頬を膨らませて、おどけてみせる。
「そ、そういうもんか?………次から善処する」
 真面目な彼は、私の言葉をしっかりと心に刻みこんでいるようだ。
「それで、どうしたんだ、今日は?」
 そして、真面目な彼には、なんとなく会いたくなるという感覚は理解できないようだ。
「とりあえず、移動しない?」
「お、おう。そうだな」 
 好太の家を飛び出してきて、一番最初に顔が浮かんだ。付き合ってるわけじゃない、だけど、凄く気になる、そんな人。好太に彼氏がいるか聞かれた時、最初に顔が浮かんだ人。
 突然の呼び出しにも驚きながらも慌てて来てくれたみたいだ。シャツが一部ジーンズの中に入ってるのがその証拠。
そんなことを嬉しく思う余裕がでてきた。

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