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仮面少年の恋
恋愛リレー小説 - 初恋

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仮面少年の恋 2


「で、あるからして…」
授業中、機械的な教師の声はほとんど僕の耳に届いていなかった。
久しぶりに再会した優梨姉のことが頭から離れない。
綺麗…だった。
優梨姉のことを考えるだけで少しだけ鼓動が早まる。胸の奥にしまっていた想いが、少ししずつ蘇ってくる。なんだか少しだけ…本当に少しだけだけど、暖かい気持ちになれた気がした。

とても良い気分だった。久しぶりに再会した初恋の人は、昔と同じ笑顔を浮かべ、昔と同じく優しかった。僕の気分と同様に天気も良く、ぽかぽかした陽気が僕を包み込む。
こんな気持ちの良い日は寝るに限る。
幸い、窓際の一番後ろという一番良いポジションに恵まれているため、教師に睡眠を咎められる可能性も少ない。
僕は腕を枕にして寝る体勢を整えた。すぐに高揚した気分と暖かい日差しが僕を眠りへと誘っていく…。

「………太、好太?」
なんだか身体がグラグラ揺れている。…地震?
「………好太、起きて」
今度は、はっきり聞こえた。揺れているのは、地震ではなく誰かに身体をゆすられているらしい。
「ん………」
「あ、起きた?」
「………え?」
優梨姉だ。
「…優梨姉、なんで?」
「なんでって、何が?」
「今…授業中」
一瞬、ポカンとしたあと、優梨姉は突然笑い出した。
「あはは、好太、寝惚けとる?」
「ん…?」
「だって、もうとっくに授業終わったよ?」
そう言われて、改めて周りを見回すと、教室には僕と優梨姉以外誰もいない。
「…放課後?」
「正解」
僕は優梨姉に気付かれないようにそっと溜め息を吐く。
またやった…
このクラスで僕の存在は『無』に近い。だから、授業中に寝たあと起きたら誰もいない、なんてよくあること。別にいいけど…。
………。
「それで、優梨姉はなんでここに…?」
「偶然、かな?」
「…偶然?」
「なんとなく歩いてたら、寝てる好太見付けたの」
「へぇ」
「偶然ついでに一緒に帰らない?」
「…うん」
自転車を押して歩くのも、MDを聞かずに帰るのも久しぶりだ。
正直、嬉しかった、楽しかった。
だから…忘れていた…。
僕がMDを聞く理由…。

「仮面少年が女連れてる」
「マジかよ」
「うわぁ…物好き〜」
「ちょっと!聞こえるって」
「大丈夫っしょ」
………ばっちり聞こえている。
自分から表情が消えていくのがわかった…。
そうだ、僕は『仮面少年』なんだ…。
僕は………。
いたたまれなくなって、自転車に飛び乗っていた…。


はぁ…逃げてしまった…。
優梨姉、どう思ったかな…。
はぁ………。
溜め息しか出てこない。
気が付くと、昔よく来ていた公園にいた。ここでよく泣いていたっけ?
自転車から降り、ベンチに座る。

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