一年に一度の恋 5
……何故なら、過去にアレクサンドロス大王が滅ぼしたペルシャ帝国からの使者、かどうかは知らないが、ペルシャ猫がそこに居たからだ。
盆踊りをして、3マス戻らなければ気付かなかっただろう。
丁度座席から死角になっていた場所に、紛れ込んだと思われるその子を抱え、あたしは語り掛ける。
「時間も時間だし、そろそろ帰るね」
メイドはそれを了承したのだろう。
大きく頷き、手をヒラヒラさせながら、
「いってらっしゃいませぇ〜」
と返す。
こうして、あたしの冒険、そう、メカフェクエストは一つの終わりを迎えた。
終わりがあるところには何故か始まりがあり、幕が閉じれば、誰かがまた開くのを待ち焦がれる。
そんなパラドクスとも呼べないような不条理を胸に抱えながら、あたしはいそいそと会計を済ませ、ついでにペルシャ猫を外に連れ出し、帰路に就いた。
その頃には、アツイアイツの事など、頭の片隅にも無かった。
それが、後にあんなことになるなんて――
あたしの名は あき
秋生まれだから
単純に あき。
地元の短大の卒業を待ち、迷うことなく住み慣れた故郷を1人離れ、憧れのこの土地に移り住み、既に3年半
田舎を離れる時は、見送る母の姿を振り返ることも、車窓から流れゆく見慣れた景色に別れを惜しむこともなく
目を瞑り
ただ、夢と希望に満ち溢れた自身の将来を、ひたすら想像していたよ。
想像は漠然としたものだったけど
なんか、楽しかったな・・・あの頃。
けど私は引き篭もりだったけどね
「青春時代に帰りたか…」
主人公は5マス進む
「ミロ アレガ バビロン ダ」
いびつな形状をした時計の、これまた可笑しなアラーム音で、あたしは帰宅してから五分経っている事に気付いた。
アラームと言っても、設定で一時間毎に鳴るだけで、何ら意味のないものだけど、あたしは何となくこれが気に入っていた。
時計の長針が5マス進む、皆それぞれが主人公……皆それぞれが抗う事出来ぬ時間を、感じさせるバビロン。
空中庭園を連想させるその単語は安堵や感動、悲愴から躍動全て均衡保つあたしのフロー。