パニックスクール 15
思考を切り替えるように話を変える光恵。この後の予定は別にない。
家に帰ればこちらの都合を全く考えない傍若無人な親父が店の手伝いをしろと言ってくるだろうし、古武術の師匠の方も来たら教えてやると言われている。
ただ、連絡だけは入れろとは厳命されている。
「うーん。暇といえば暇だけど、ちょっと待ってくれるか?」
携帯電話を取り出し、師匠へと電話する。
「もしもし、隆介じっちゃん。わりぃけど今日、用事が出来ちまったから行けそうもねぇんだ……明日は行けると思うんで。それじゃ、あまり呑み過ぎないでよ。母さん、今病院行ってて世話するのは俺なんだから」
最後に苦笑してから電話を切る。
「話はついたみたいね。それでね、ちょっと買い物に付き合って欲しいんだけどいいかな?」
「買い物か……まあ、それくらいなら」
了承しようとして腕を掴まれる。
隣をみると絵美。腕を絡ませて自分のほうに寄せるように組む。
平均より大きい胸が洋平の腕で潰れてぐにゃりと歪ませて存在をアピールする。
「だったら、私が着いて来ても問題ないですよね?」
「ええ、いいわよ」
2人の視線が再び空中で衝突し、火花を散らす。
再び勃発した乙女の戦いに洋平はまた、雰囲気が悪くなった事に頭が痛くなったような気がした。
(もう、魚崎君の鈍感!!)
大泉駅に向かう道すがら、洋平の右側を陣取りながら腕を組んで歩く。
普段の彼女なら、顔を真っ赤にしておずおずと裾を引っ張るのが関の山だった。
だが、今の彼女は恥も外見もかなぐり捨てて、片思いを抱いている事をアピールするが悲しいかな、当の本人が気付かない。
だから、彼女は今の洋平に内心憤慨していた。
(大体、野々宮さんもよ。キスしたからって責任以って付き合ってなんて……)
胸の辺りが痛む。病も患っていないのに。
「そういえば、野々宮。連中の録画って消去したのか?」
洋平はと言うと光恵と話している。私だけを見て、私だけと話して。
そうならないのは分かっている。
理性では理解していても感情が納得いかない。
「録画って……」
「ほら、女子の身体検査。盗撮されたって女子風紀の衛藤が言っていたぞ」
(また知らない女の人の名前)
ムカッと嫉妬して洋平を軽く睨むも本人はやはり気がつかない。
「斉藤?って、どうした?」
「なんでもないです」